違法か合法か、その境目があいまいなケースもあります。

 たとえば「パラダイス文書」には、「ドラゴンボール」や「ドクタースランプ」で知られる漫画家の鳥山明さんの名前が出てきます。鳥山さんは租税回避スキームを使って海外不動産に投資し、その一部がタックスヘイブンに関わっていた。そうして日本での納税額を圧縮したんですが、国税当局はこれを認めず、課税した。同様のことをして課税された何人かが国税当局を裁判所に訴え、一審、二審では一部、「合法」の判決も出ました。2015年の最高裁判決では「違法」となり国が勝訴しました。つまり、その税逃れが、違法なのか、合法的な節税なのか、裁判所の判断すらも分かれるほどあいまいで難しいのです。

 パナマ文書などによる問題提起もあり、租税回避対策のための法制度を整備しようという動きが進みつつあります。でも、制度が変われば、さらにそれをすり抜ける方法を考える人もいる。本国やタックスヘイブン地域はもちろん、お金が通る全ての国や地域の最新の法制度に精通する弁護士や会計士に依頼し、各国のそうした専門家のネットワークを使えば、税逃れはおそらく将来も可能でしょう。ただ、それには当然、費用がかかります。

 その費用を払える財力のある大企業や大富豪がタックスヘイブンの恩恵にあずかり、ますます富む。彼らが逃れた税金のしわ寄せはどこに行くのか? それは、そういうことをしない企業や一般の国民です。

(取材・構成/中津海麻子)