――タックスヘイブンにまつわる秘密文書といえば、昨年4月に報道され、アイスランドやパキスタンの首相を退陣に追い込んだ「パナマ文書」が記憶に新しいところです。パナマ文書とパラダイス文書の違いは?

 量も質も違います。日本関連で言えば、パナマ文書に登場する個人や企業は数百だったのに対し、パラダイス文書では1000を超えています。また、パナマ文書ではほとんどの場合、社名や役員名、タックスヘイブン法人への出資くらいしかわからなかったのですが、パラダイス文書では出資のスキームを描いたチャートや、取締役会の議事録など、より立ち入った記録が多々あります。タックスヘイブンのより多くの側面が見え、そこで何が起きているのかが読み取れる。パナマ文書はタックスヘイブンの不透明な部分をかなり明瞭にしたと思いますが、 パラダイス文書ではさらにもう一歩進んだと感じています。

――なぜタックスヘイブンには、南国の島など小さい国や地域が多いのですか?

 資源が乏しく産業のない小国にとって、企業やファンドを誘致し、その手数料収入を得ることはそれだけで相対的に大きな財源となる。そのために税制上の優遇をするのです。法律事務所や金融機関が拠点を置けば、雇用も生まれる。タックスヘイブンであることが、小さな国にとっては一大産業になりうるのです。そういう意味では、タックスヘイブンを使って税逃れをする大企業や大富豪とは「持ちつ持たれつ」で、利害関係が一致していると言えます。

 ただし、どんな国でもタックスヘイブンになれるわけではありません。政治的に安定し、法や司法の制度、社会的なインフラが整っていること。そして一定の教育水準があること。英語が通じること。イギリスの法律や教育制度が適用される英領の諸島にタックスヘイブンが多いのは、そうした理由からと考えられます。

――タックスヘイブンを利用した税逃れは、「違法」ではない?

 法に触れることがないように、法の網の目をかいくぐっていますから、合法であることが多いです。

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例えば鳥山明さんの場合…