中学受験が変わってきています。これまでの国語・算数の2教科や、理科・社会科を含めた4教科での受験以外に、塾などで身につけた学力ではなく、自分で考える力を評価する「思考力テスト」や、得意な1科で挑戦できる「英語入試」や「算数入試」といった新たな入試に取り組む中学校が増えてきています。『AERA with Kids冬号』(朝日新聞出版)では、新しいタイプの中学入試について取材しました。

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 2016年の2科4科以外の入試を見てみると、聖学院中学校の「思考力ものづくり入試」、大妻嵐山中学校の「ORみらい入試」、桐蔭学園中学校の「AR(アクティブラーニング)入試」、宝仙学園中学校 共学部 理数インターの「リベラルアーツ入試」など、実に様々な入試が行われています。言葉だけを見るとどんな入試かイメージしにくいかもしれませんが、これらは全て思考力や日本語力、判断力などで評価する「思考力テスト」。このような入試が増えた背景について、安田教育研究所代表の安田理さんは次のように話します。

「近年の入試の多様化には複数の要因があります。まず、2020年度の大学入試改革の影響。従来型の知識型入試から思考力や表現力を問う内容に変わることを受けて、中学受験においてもそれらを意識した入試が増えてきています。こうしたタイプの入試を行うことで、『うちの学校は、大学入試改革についてきちんと対応していますよ』というメッセージを伝えているのです」

 また、新タイプの入試を実践する学校側の別の事情もあるようです。

「リーマン・ショック以降、家庭の経済力が低下し、塾に通わせられない家庭や『中学受験をしない』家庭も増えました。そのため、通塾している子どもだけを対象としていては、募集定員に満たない私立中学一貫校が出たのです。そこで塾に通っていない小学生にも得意な英語や算数の見の入試や思考力テスト、自己アピールをするプレゼンテーションなどで受験できる道を作り、生徒を募集している側面もあります。また、小学校のときに塾に行かずに思い切り遊び、好きなことに熱中していた子どもの、その後の成長に注目している部分もあるようです」(安田さん)

 同時に、親の中学受験に対する価値観にも変化がみられるようになってきました。私学に興味はあっても、一度しかない大事な子ども時代に塾通いで疲れすぎてしまうことや、勉強漬けで好きなことを中断しなければならないことに抵抗を感じ、好きなことや興味のあることを思う存分させてあげたいと考える親が増えています。こうした双方のニーズ一致したものが、ここ数年増加している、新しいタイプの入試につながっているわけです。

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AERA dot.編集部
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