2013年「いじめ防止対策推進法」が成立し、いじめは重大事態として位置づけられましたが、それ以降、逆に「いじめ隠し」が広がっている感すらあります。

 こうした流れは「学校の問題を学校が解決する」という現在の仕組みでは断ち切れません。学校とは独立した機関が必要です。そのためのスクールロイヤー(弁護士)という制度も議論されています。もちろん、どんな制度でも「学校を守る制度」ではなく、「子どもを守る」ことを目的とした制度でなければ意味がありません。

■教師も子どものために動けない

 いじめ自殺が起きるたびに、学校はさまざまな資料を隠し、裁判で勝利を積み重ねてきました。しかし、それは、なんのための勝利なのでしょうか。学校の勝利で、遺族も他の生徒も傷つきますが、おそらく教員たちも傷ついているはずです。目の前の子どもが亡くなったにもかかわらず、学校を守るために動かなくてはならないからです。現場の教員に聞くと「真実を告発するためには生活を投げ出さないとできない」と話してくれました。先生たちも、子どもを思って行動することができない状態になっています。

 いじめ自殺と、それに続く事実の隠ぺいがくりかえされるなかで、学校は何のために存在しているのかを考え直し、子どもを守っていける制度づくりに本腰を入れてほしいと願っています。(文/石井志昂)

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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