それまで歯に関する話などに筆を入れることのなかった鳥居さんだが、自由という条件のもとなら、と挑戦することにした。しかし、書き終えて原稿を渡すと意外な反応がきたのだ。

「完成した物語を持って行ったら、『こちらが求めていたのは、歯科助手を活かした歯に関するコラムです、書き直してください』って言われて。いや、自由って言われたのにどこが自由なんだよ、すごい不自由じゃないかよって(笑)。」

 結局書き直しはせずに、魂を込めた力作をこのまま世に出さずに埋もれさせるのは勿体無いと思い、当時のマネージャーさんに相談したという。この物語を何とか世に出したい。そんな想いの鳥居さんにマネージャーさんは、「丁度、絵本のオファーが来ていますよ」と、まさかの予期せぬ言葉。

 それが昨年。

 その後は、絵本出版に向けての話がトントン拍子に進んでいった。

 しかし、絵本の出版が決まったまではよかったが、ここで一つ大きな問題が。

「実は、絵を描いたことがなかったんです、ハハハ」

 笑いながら、振り返る鳥居さん。しかし、ストーリーはあるが、絵が描けない。それでは絵本として成り立たない。どうしようかと立ち止まる鳥居さんに、ある言葉が放たれた。

「自由に描いていい」

 この本の物語を書く時に言われた言葉。その瞬間、鳥居さんの闘志に火がついた。あの時を見返すように、絵に没頭した。そして、絵でもまたいかんなく才能を発揮する。

「例えば、歯を投げるシーンの絵なんて描いたことないから、ネットで『ボール、投げる』で検索して、出た画像を参考にしながらひたすら書いたんですよ。書いていると、どんどんイメージが膨らんできて、すごい絵を描くことが楽しくなっちゃって。気付いたら1ページ描くのに2日くらいかけていましたよ。あっ、ちなみにこの歯を掴んでいる絵は、私が、さけるチーズを握ってそれを見て、書いたんです。だから、これ私の手ですよ。それと、歯が体育座りするシーンは、後輩芸人に体育座りしてもらって書いたし、この迷路なんて意外に難しくなってて、ゴールするのに時間かかりますよ~」

次のページ
出版後、旦那さまの反応は?