鉄道技術展での運転士の実演の様子(撮影/河嶌太郎)
鉄道技術展での運転士の実演の様子(撮影/河嶌太郎)

車掌側のシミュレーターの様子。側面や足下にもディスプレーが装着されている(撮影/河嶌太郎)
車掌側のシミュレーターの様子。側面や足下にもディスプレーが装着されている(撮影/河嶌太郎)

指令側のシミュレーターの様子(撮影/河嶌太郎)
指令側のシミュレーターの様子(撮影/河嶌太郎)

 電車に乗ろうとしたけど、人身事故や信号機故障によって電車が動いていない……都市部に住んでいる人なら、そんな経験をしたことがある人も少なくないのではなかろうか。だが、これからはそんな事態になってもより早い運転再開が望めそうだ。

 JR東日本グループで、鉄道車両メンテナンスなどを手がけるJR東日本テクノロジーは29日、千葉市の幕張メッセで開かれている「第5回鉄道技術展2017」で、新しい乗務員育成シミュレーターを初公開した。

 「乗務員区所シミュレーター」と名付けられ、運転士と車掌と輸送指令が一体となって訓練できるのが特徴。同社の担当によると、「運転士と車掌が連携を取れるシミュレーターは例がない」と言う。実写の映像を使用しているのも特徴で、信号やホーム上の一部の乗客などはCGで合成されている。

 開発したのは、鉄道運転シミュレーションゲーム「Train Simulator」を手がけた「音楽館」。ゲームが大ヒットしたのをきっかけに、音楽館は2000年代後半から博物館や企業向けの運転シミュレーターを提供し続けてきている。同社のシミュレーターは「鉄道博物館」(さいたま市)や「東武博物館」(東京都墨田区)をはじめとした施設で展示され、乗務員育成用としてはJR九州や東京急行電鉄などでの導入実績がある。現場の鉄道員でも驚くほどのリアリティに定評があるという。

 会場では、JR東日本・京葉線の乗務員によるデモンストレーションも行われた。デモは幕張メッセの最寄り駅である海浜幕張駅から千葉みなと駅の3駅間を運行。まずは、海浜幕張駅から、千葉側の検見川浜駅間は通常の運転が実演された。

 だが、あくまで訓練用、そのままただ走行して終わるというものではなかった。検見川浜駅から稲毛海岸駅間では、信号が赤のまま変わらない信号機故障が発生。運転士が輸送指令と連携をとり、自動ブレーキを解除、信号が赤の状態のまま徐行することで、列車は無事稲毛海岸駅に到着した。

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