今オフでこのパターンに該当しそうなのはメルビン・アップトンJr.か。2002年のドラフト全体2位でデビルレイズ(現レイズ)から指名され、やや粗さはあったものの抜群の身体能力で走攻守の全てで非凡なプレーを見せていた選手だ。タイトル獲得こそないが通算164本塁打、300盗塁は十分に素晴らしい実績だろう。

 しかし、今季は開幕直後にブルージェイズから解雇され、マイナー契約を結んだジャイアンツでは親指の腱を断裂する不運に見舞われた。その故障は完治したものの、低迷したジャイアンツが世代交代へ舵を切ったためにメジャーに復帰できないまま8月に戦力外となっている。素行面の問題もしばしば指摘される選手ではあるが、2016年には20本塁打・27盗塁をマークしたように万全の状態ならばまだまだ活躍できる力を残しているはずだ。

【期待外れのトッププロスペクト】

 このケースは日本では無名ながらもアメリカの野球好きには知られているパターン。ドラフト1巡などの上位指名でプロ入りしながらも大成できず、日本に活路を求めるといった場合だ。ドラフト全体1位でパイレーツに指名されながらもメジャーでは26試合の登板で1勝に終わった元広島のブライアン・バリントンを思い出してほしい。

 今オフには2013年のドラフト全体1位指名右腕、マーク・アペルが戦力外となっている。アペルはドラフト指名を2回蹴って(しかも2回目は全体8位だった)満を持してプロ入りした超トッププロスペクトだった。ところがプロではマイナーでも好結果を残せず、オールスター・フューチャーズゲームに選出された2015年も3Aで防御率4点台。そのオフにはアストロズからフィリーズへトレードされたが、新天地で肩やひじを相次いで痛める不運に見舞われ、今季は3Aでは17試合に投げて5勝4敗、防御率5.27。ついにメジャーデビューできないままオフに戦力外となった。

 まがりなりにも、メジャーで登板経験があったバリントンよりも実績に乏しく、しかも故障がち。まだ26歳ではあるがプロ野球選手として通用する能力はもはや失われている不安もある。だが本人にまだ現役続行する意思があるならば、起死回生の海外挑戦に打って出るかもしれない。