そのため、注文を受ける漁師たちの営業スキルのアップにも力を入れているという。

 海がしけて漁に出られない日、坪内さんは漁師たちと電話の受け方やメールの書き方など、ロールプレイングをまじえた研修を行っている。

「お世話になっております」「ありがとうございます」

 漁師たちの野太い声が、倉庫から聞こえてくるのも萩大島船団丸ならではの光景だ。

 旧来の「魚をとるだけの漁業」に一石を投じた坪内さんと船団丸の漁師たちの挑戦。今後彼らはどこに向かおうとしているのだろうか。

「今、日本中の海で異変が起きています。このまま放っておいたら、水産業は衰退する一方。豊かな水産資源を守りながら、漁師も潤う漁業のしくみづくりが急務です。『鮮魚BOX』を突破口に、漁業にまつわる流通、販売、コンサルティングや漁港のツアー企画まで、新しい事業を切り開いていくことが大切だと思っています。私たちの試みを参考に、日本中の浜が活気を取り戻してくれたらいいな、と思います」

 魚がいっぱいの青い海と、活気あふれる漁師の浜を、100年後も残したい。そのために、彼らの地道な挑戦はつづいていく。

「鮮魚BOX」はまだ進化の途中だ。(文/辻由美子)