大リーグ屈指の左腕であるカーショーは好漢としても知られる(写真・Getty images)
大リーグ屈指の左腕であるカーショーは好漢としても知られる(写真・Getty images)

「メジャーナンバーワン投手は誰か?」

 そんな質問を受けた時、ここしばらくは大半の球界関係者が「クレイトン・カーショー」と答えるのが恒例になってきた。

 2011年に最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の“投手三冠”を達成し、サイ・ヤング賞も通算3回受賞しているサウスポー。2014年に史上11人目のサイ・ヤング賞、MVPの1シーズン同時受賞を果たすなど、カーショーは現代の大リーグでは飛び抜けた実績を残してきた。

 特に2011年以降はすべての年で防御率2.53以下という圧倒的な成績。2014年1月に7年2億1500万ドル(約226億円)でドジャースと再契約し、史上初の“年俸3000万ドルプレーヤー”になった時も、球界全体が「カーショーなら当然」という空気になったものだった。

 紛れもなく球史に名を残す現代のエースだが、この左腕は実力こそ突出していても、普段から近づき難さを感じさせる選手ではない。映画の都・ハリウッドにほど近い場所に本拠地を置くにもかかわらず、フィールド外の派手なエピソードとは無縁。いわゆる“ハイスクール・スイートハート(高校時代からの彼女)”と結婚し、とにかく野球のことばかり考えているという話も伝わって来る。

 その素朴な人柄が象徴的な形で披露されたのが、2013、2014年に2年連続でサイ・ヤング賞を獲った際のことだった。受賞者は直後にMLBネットワーク、ESPNなどに生中継で出演するのが通例。その際、カーショーはひとりで注目を独占するのではなく、自宅で家族、多くの友人たちに囲まれながらそのインタビューを受け、視聴者を驚かせたのだった。

「これが僕の妻と親友たちだ。例えサイ・ヤング賞に選ばれなくても、僕たちはいずれにしてもパーティーをするつもりだった。楽しんでいるよ」

 2013年のMLBネットワークでのインタビューではそう語り、シーズン中には見せない満面の笑みを浮かべていたのが印象的だった。“パーティー”とは言っても、大酒を飲むのではなく、「ピンポンとビデオゲームで遊ぶつもり」。そんな姿を見て、好感を持たない関係者、ファンは存在しなかっただろう。

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