果たせるかな、11月17日付の産経新聞や地方紙が報じた全国地方銀行協会(地銀協)の調査によれば、民間から融資機会を奪うなど政府系金融機関が民業を圧迫した例が424件あったことが判明した。税金で一部負担する利子補給を活用し、最低で地方銀行の3分の1程度の低い金利を提示していたこと、優良顧客を商工中金が民間銀行から横取りしたケースなども報じられた。中には不正発覚後にも横取りセールスをしていたケースまで報告されたという。

 経産省は、とりあえず、現社長をクビにして、次期社長には民間人を充てる方針だ。しかし、そんなことでお茶を濁して終わりということではいけない。

 やるべきこと、すなわち「改革」は3段階で行えばよい。

 第1段階は、今回の不祥事の徹底究明と責任者への厳格な処罰だ。今の社長が辞めるだけで終わらせては、全く的外れな結末になってしまう。現社長の安達氏は私もよく知っているが、そんなに暴走するタイプではない。社長になった時は全社で不正が蔓延していて、ほとんど当たり前のように行われていたようだ。問題は誰がこれを始めたかだが、私は、不祥事が広がった時期に副社長、社長の任にあった元経産事務次官の杉山秀二氏こそ、最大の責任者だと考えている。当時のトップとして業績を上げろと現場にプレッシャーをかけたことはなかったのか。コンプライアンスの体制を十分に整えていたのか。そうした点について十分な取り調べが必要だろう。たまたま問題が発覚した時の社長の首を切って終わりにしてはならない。再発防止には、杉山秀二前社長にも退職金返納などを求めるべきだと思う。

 第2段階は、他の政府系金融機関についても同様の問題がないかを調査することだ。ここまで述べた商工中金の民業圧迫と民営化の問題、さらには経産省の天下りを含めた複雑な利権の問題は、実は、財務省と日本政策金融公庫(日本公庫)や他省庁とその傘下の政府系金融機関にも当てはまる。

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