夏から秋にかけてニュースをにぎわせたヒアリとカワウソから、日本の野生動物がおかれた環境について考えてみよう。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介する。

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 長崎県の沖合に浮かぶ対馬で、今年2月、野生のものとみられるカワウソが自動撮影カメラに写っていたと、琉球大学の伊沢雅子教授たちが8月17日に発表し、大きな話題となった。

 日本には、ニホンカワウソが明治時代まで全国に生息していたが、毛皮を目的とした乱獲や生息環境の悪化により、1980年代~90年代に絶滅したと考えられている。

 対馬にも、江戸時代にカワウソがいたという記録が残っている。ということは、カメラに写ったのは絶滅を逃れたニホンカワウソの生き残りではないか? 誰もが期待を抱いたが、10月12日に環境省が、採取したふんから、雄のユーラシアカワウソのDNAを改めて検出したと発表。「ニホンカワウソが生き残っていた可能性は低い」との見解を示した。

 ニホンカワウソのニュースに注目が集まったのは、国内ですでに絶滅した、あるいは絶滅が心配される野生動物が多いからともいえる。哺乳類に限っても、ニホンカワウソのほかにニホンオオカミやオキナワオオコウモリなど7種がすでに「絶滅」したと、環境省のレッドリスト(※)に載っている。「近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高いもの(IA類)」には、ツシマヤマネコ、イリオモテヤマネコ、ジュゴン、ラッコなど12種があげられている。

(※)レッドリスト=すでに絶滅したり、その心配があったりする野生生物の「絶滅危機の度合い」を評価した一覧表。国際自然保護連合(IUCN)が1966年からほぼ毎年、発表している。これとは別に、日本では環境省が国内の生物について同様のレッドリストを91年から公表、約5年ごとに見直しをしている。

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上浪春海
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