今オフにマーリンズからFAとなったイチロー(写真:Getty Images)
今オフにマーリンズからFAとなったイチロー(写真:Getty Images)

「ニューヨークでイチローがプレーする姿を見るのは最後かもしれない」

 8月18~20日までシティフィールドで行われたメッツ対マーリンズ戦の際、ふとそんな感慨を覚えた。その時点で元スーパースターのデレック・ジーターが含まれたグループがマーリンズの買収に合意したという報道がすでに飛び交っていた。イチローを重宝していたジェフェリー・ロリア・オーナーが去り、10月に44歳になる現役最年長選手のオプションがピックアップされるかどうかは定かではないように思えたのだ。

 案の定、チーム作りの舵取りを担うとされるジーターは、来季年俸200万ドルというイチローの契約オプションを行使しなかった。ヤンキース時代には盛んにリスペクトの想いを述べていたジーターに再契約を拒まれたのだとすれば皮肉な結果。ただ、マーリンズが今後、新体制に移行するなら、現役最年長選手を抱えておくより、よりフレッシュな陣容で挑もうとするのは当然だったのだろう。

 “50歳まで現役を続けたい”と述べていたイチロー。そうは言っても、このようにチームから構想外とされるのは十分に想像できたことではあった。そして、現役続行に向けて、来季の職場を見つけるのは簡単ではあるまい。

 今季オールスター以降では打率.299(87打数26安打)と、まだメジャーでも一定の成績を残す力は保っている。豊富な経験を持ち、人気も抜群。ただ、長打率では自己ワースト2位だったことが示す通り、もうゲームにインパクトを与えられる打者ではない。何より、3つのポジションを守れるのが売りの控え外野手としては、2017年は守備防御点は-1とネガティブな数字が出てしまったのが痛い。データ重視のチーム作りが進む現在のMLBで、守備の貢献度が平均以下の44歳の控え外野手との契約を考えるチームが現れるかどうか。

 古巣マリナーズへの復帰を予想する声もあったが、現在行われているGMミーティング中、フロントは獲得に消極的だったと伝えられる。いかにシアトルの英雄とはいえ、少なくともオフの早い段階では人気、レガシーに依存した選手獲得は考慮できないということか。こんな対応は象徴的で、今オフの椅子取りゲームでイチローの苦戦は濃厚。8月に感じた通り、希代の外野手のメジャーキャリアが2017年で幕引きを迎えても不思議はないと筆者は考えている。

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