珍名踏切マニアがいく! 茅ヶ崎「異人館踏切」をめぐる2人の異人さんの謎を解く (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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珍名踏切マニアがいく! 茅ヶ崎「異人館踏切」をめぐる2人の異人さんの謎を解く

連載「珍名踏切が好き!」

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今尾恵介dot.#鉄道

東海道線の茅ケ崎駅南口。サザン通り商店街が浜へ伸びる

東海道線の茅ケ崎駅南口。サザン通り商店街が浜へ伸びる

北側から異人館踏切を望む。これがラチエン通り

北側から異人館踏切を望む。これがラチエン通り

ラチエン通りの標識。「ローマ字表記」がちょっと残念

ラチエン通りの標識。「ローマ字表記」がちょっと残念

今回紹介した踏切周辺の地図

今回紹介した踏切周辺の地図

 踏切の名称に惹かれて何十年の、いわば「踏切名称マニア」である今尾恵介さんが、全国の珍名踏切を案内してくれる連載。今回は「異人館」踏切を紹介します。

【フォトギャラリーで見る】今尾恵介が紹介する珍名踏切 <異人館踏切編>

*  *  *
 湘南と聞いて多くの人が思い浮かべる地名といえば、茅ヶ崎だろうか。サザンオールスターズの桑田佳祐さんの故郷でもあり、ヒット曲に「茅ヶ崎」が長年にわたって連呼された結果、この地名は全国区となった。東海道線の茅ケ崎駅に近い南口中央商店街も、平成11(1999)年に「サザン通り商店街」と改められたそうだ。

 その茅ヶ崎に異人館踏切という変わった名前の踏切がある。東海道線の茅ケ崎駅南口を出て線路にほぼ沿ったバス通りを東へ1.4キロほど進み、若松町の交差点で左折した先だ。久しぶりにきれいに晴れ渡ったある日、現地へ赴いた。まっすぐな道を300メートルほど北上すれば東海道線を横切るこの踏切である。

 しかし、周辺に異人館らしき建物は見当たらない。考えてみれば「異人館」という呼び方からして時代がかっているので、命名は戦前かもしれない。踏切を渡ってすぐ南側へ引き返すと、道に面したプランターに水やりをしていた定年直後とお見受けするおじさんが。尋ねてみると「この通りはラチエン通りというんですが、そのラチエンさんの屋敷があったそうですよ。だから異人館なんでしょう」との回答。どこにあったのかはご存じでないらしい。

 なるほどマンションの名前に「ラチエン通り」を伴ったものがあり、要所にある街灯の上方にもその標識が取り付けられていた。地図によればこの通りは海岸まで2キロほども一直線で続いており、それでいて幅はあまり広くない。他の屈曲して自然発生的な道に比べて異彩を放っているので後で調べたところ、江戸時代に茅ヶ崎村と小和田村が境界争いした際、東海道の塚から相模湾の烏帽子岩を直線で結んだラインに境界が決まり、これに沿って道がつけられたらしい。少なくとも明治期の地形図には描かれている由緒ある道だ。

 それにしても、標識ではラチエン通りがRachien-doriとベタなローマ字なので、これではどこの国の人かさっぱりわからない。先ほどの交差点からさらに南ヘ歩くと、Plainという洒落たカフェがあって、その木製看板にRue Ratjenの文字が添えられている。Rueはフランス語で「通り」だから、これがラチエンさんの綴りなのだろう。すぐ先の「松が丘ラチエン通り公園」のプレートには欧文表記はなかったが、傍らにラチエンさんの紹介文があった。やはり歩いてみるものである。


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