森岡亮太と交代で下がった61分までそうしたプレーを続けた長澤の存在抜きに、親善試合でエデン・アザールら主力の数人を欠くとはいえ“格上”のベルギーに対し、70分過ぎまで0‐0でしのぐことはできなかっただろう。しかも、サイドのクロスから何度か大きなチャンスを作る起点としても機能した。

 「はじめての試合にしては本当に良かった。たくさん走って守備もしてくれた」とハリルホジッチ監督も高く評価した長澤。強いて課題を挙げるなら、“デュエル”で奮闘しても何度か前を向かれたシーンがあったこと、攻撃で前に飛び出していくなど、もう1つ先でゴールに直結するようなプレーが不足していたことだ。

「攻撃面でもう少し顔を出してほしいが、国内組の問題でリズムについていけない。こういう試合でついていけるのは(山口)蛍。ただ長澤はテストしましたから。このような簡単ではない相手にどうプレーするか。私は満足している」

 指揮官も高く評価はしつつ、国内組でもすでにA代表で豊富な経験を持つ山口を引き合いに出し、課題を指摘することを忘れなかった。

 中盤の攻撃的なポジションには森岡、2試合で出番の無かった倉田秋に加え、今回はメンバー外だった香川真司や怪我から復帰を目指す柴崎岳など欧州のビッグリーグでプレーする有力選手がいる。12月に国内組で臨むE‐1選手権(旧東アジア選手権)で清武弘嗣などが再びアピールしてくるかもしれない。

 “攻撃的MF”としては守備で貢献できるし、中盤に長谷部誠、山口、井手口とより守備的な選手を並べる布陣より攻撃の質はアップするが、交代した森岡ほど攻撃面で決定的な働きができているわけではない。香川や柴崎と比較してもそうだ。

 また守備面でも大きな働きはできているが、ベルギーのような相手との“デュエル”の局面で直接ボールを奪うにはパワーも駆け引きも向上の余地がある。攻守のアベレージが高く、チームの戦術的な選択肢として定着するには十分なアピールだが、主力となると現在のプレーを継続して量や質を高めるだけは足りない。

次のページ