トライアウトにエントリーしている、前ソフトバンク・大隣=2015年撮影 (c)朝日新聞社
トライアウトにエントリーしている、前ソフトバンク・大隣=2015年撮影 (c)朝日新聞社

 今月11日、大谷翔平日本ハム)が正式にメジャー・リーグ移籍について会見を行った。今後はポスティングシステムの手続きを経て交渉に入ることになり、その去就はアメリカでも大きな注目を集めている。

 しかし大谷のように華々しく日本球界を去る選手はほんの一部であり、球団から契約を更新されないことを通告される選手が大半である。そんな選手たちの最後のチャレンジの場としてすっかりおなじみとなったのが12球団合同トライアウトである。

 毎年トライアウトから契約に至る確率は10パーセントに満たない程度であり、非常に狭き門であるのが現状だが、過去にはそこから華々しく復活した選手も確かに存在している。2003年に西武を退団した宮地克彦はトライアウトを経てダイエー(当時)に入団すると、外野の一角に定着し2005年にはベストナインを受賞する活躍を見せている。

 今年のトライアウトは投手28人、野手25人の53人がエントリーして15日にマツダスタジアムで行われるが、その中から復活の期待がかかる選手、またマッチしそうな球団について探ってみたいと思う。

 今回のエントリー選手の中で最も実績があるのが大隣憲司(前ソフトバンク)だ。2013年に難病である黄色靭帯骨化症と診断されてからは苦しいシーズンが続いているが、投球術は見事であり体調面さえ問題なければ先発候補として期待できる。

 サウスポーでもうひとり面白いのが乾真大(前巨人)だ。過去2年間の一軍登板は7試合にとどまっているが、今季のイースタンでは中継ぎとしてチーム2位の34試合に登板し、投球回を上回る奪三振をマークしている。数字以上にキレのあるボールは大学時代から定評があり、三振を奪えるサウスポーは貴重だ。大隣、乾ともに左投手が不足しているロッテ、広島あたりは獲得を検討しても面白いだろう。

 右投手では土田瑞起(前巨人)、岸本淳希(前中日)に注目したい。土田は育成選手出身ながら一軍で2勝、1セーブの実績があり、力のあるストレートが魅力。昨年右ひじを手術しているが、今年も二軍、三軍では中継ぎとして安定した成績を残している。岸本も育成契約から支配下登録を勝ち取った選手。サイド気味の腕の振りからたたきつけるように投げ込むストレートには威力があり、昨年オフにはU-23W杯の日本代表でも活躍している。ともに良い時のピッチングができれば中継ぎとして期待できる。救援陣の手薄なヤクルトなどはうまくはまる可能性があるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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