「そこで自己資本比率の次に見たいのが、キャッシュ・フロー計算書に示されている『営業キャッシュ・フロー(営業CF)』の項目です。営業CFの金額がプラスになっていれば、その会社は『事業からしっかり現金を生み出せている』証拠になります。逆に、利益が出ていても営業CFがマイナスの場合は、『会社から現金が流出している』ことを意味するので要注意。これは人に例えるなら、出血しながら運動している状態です」

■借入金は会社の「信用力」を表す

 自己資本比率で会社の骨格を、営業CFで会社の血流を確認する。そして最後に確認してほしいのが、「会社の借入金(借金)だ」と佐伯氏は指摘する。

 注意したいのは、借入金を見るときは、金額の大きさだけでなく“質”に注目しなければならない点だ。個人の感覚で捉えると、借金はネガティブなイメージが強い。しかし会計では、借金の大きさは「その会社の信用力の大きさ」を表す側面もある。

「例えばソフトバンクの直近の負債額は約20兆円で、総資産の約82%が負債によってまかなわれています。つまり“借金まみれ”な状態なのですが、注目したいのは、そのほとんどが『長期借入(1年を超えて返済可能な借金)』であることです。これはつまり、金融のプロたちが同社を信用し、『すぐに潰れる可能性は低い』と見込んでいる証拠といえます」

 逆に要注意なのが、長期借入ができず『短期借入(1年以内に返済義務のある借金)』が多くなっている会社だそうだ。これは個人に例えるなら、銀行から金を借りられず、消費者金融でしのいでいる状態。さらに業績が悪化すると、短期借入すらできず、自己資金を取り崩さなければならなくなり、「こうなると赤信号」だと言う。

「このような特徴は、経営危機に陥ったシャープや東芝等にみられた特徴です。そしてこれらの長期・短期の借入金の流れは、キャッシュ・フロー計算書の『財務キャッシュ・フロー(財務CF)』の項目にすべて書かれています。東芝の不正会計でもキャッシュ・フローはほとんど操作できず、まさに『キャッシュは事実』だったのです」