そんな非難の中でも、なすびさんは福島県に勇気を与えたいという一心でエベレスト登頂に臨んだ。アクシデントや地震に見舞われ3度の登山を断念するも、ようやく4度目でエベレスト登頂に成功する。

「頂上では、自分でカメラを回して、福島県の皆さんに、『こんな僕でもエベレストに登れたんです。奇跡は起こせるんですよ』ってエールを送りました」

 ある意味、不器用で過酷な生き方を選ぶなすびさん。しかし、懸賞生活があったからこそ、どんな辛い事も乗り越えられるし、楽しんでやっているという。

「懸賞生活は一枚一枚ハガキを書き続ける作業。エベレストに登るのも、一歩一歩登り続けるだけ。どちらも自分との戦い。でも、懸賞生活と比べたら全然辛くないんですよ。だから、何をやっても楽しんでいる自分がいますね。実はエベレスト登頂後に、ダウンタウンDXにゲストで呼んでもらったんですが、松本人志さんに『エベレスト登頂したし、次は懸賞生活やな』と言われたんですが、『いや、懸賞生活するくらいならエベレストに100回登った方がましです』と即答しましたから。その位、懸賞生活はトラウマなんです」

 そういいながらも笑顔で顔を皺くちゃにしながら話すなすびさんは、本当に今、自分しか出来ないことを率先してやっいる。

「福島県の観光大使を始め、福島県ローカルのテレビやラジオのレギュラー、そして劇団丸福ボンバーズに所属し役者活動、本やネパール地震の復興ボランティアなど、自分は何でも屋かってくらい色々やらせてもらっています」

 懸賞生活、エベレスト登頂と世間にインパクトを与えてきたなすびさんには、「次はどんなアクションを起こすんですか?」という質問も多いそうで、現に記者もそう問いかけたが、なすびさんは意外にも冷静に見据えている。

「僕にとっては、ボランティアであろうが、テレビや舞台であろうと、全て注ぎ込むエネルギーと優先順位は同じなんです。これら全てがあっての自分だと思っていますから。だから、少しスケジュールを取られても、復興支援では必ず現地に足を運ぶということも大切にしています」

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