1球ごとに歓声とため息が交じり合う、行き詰まる攻防はカウント3-2から山崎康の宝刀・ツーシームに柳田のバットが動き、ハーフスイングを取られて空振り三振。その瞬間、柳田は天を仰ぎ、横浜スタジアムのボルテージは最高潮に達した。

 控え選手と守備位置の兼ね合いから、その打席後に柳田は交代。右わき腹痛から復帰したのは先月22日のこととあって、痛みの再発が懸念されたが「故障というわけではない。全然そういうわけではない」と工藤公康監督。試合後、柳田は「打てんかったけえ、代えられました」と自嘲気味に出身地の広島弁でボヤいた。ソフトバンクは9回も2死満塁のチャンスをつかんだが、最後は明石が一ゴロ。ソフトバンクはあと1本が出ないまま、わずか1点差を追いつけなかった。

 開幕3連勝で2年ぶりの日本一奪回へ一気に王手をかけながら、横浜での連敗で足踏み。それでも指揮官は「最後の攻撃なんか、すごく良かったんじゃないかな。そう簡単には終わらないところを示してくれた。選手は頑張ってくれています」と悔しさを覆い隠すかのように語気を強めた。

 DeNAの強力打線がつながり始め、筒香にも本塁打が飛び出した。その勢いは侮れない。それでも、ソフトバンクは4日から本拠地・ヤフオクドームに戻って試合ができる。今季のレギュラーシーズン、ヤフオクドームでは48勝19敗。そのホームの後押しは何よりも心強いだろう。2年ぶりの日本一を地元ファンに見せることができる――。そうプラスに捉える切り替えの早さも、短期決戦では絶対に必要だ。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。