書店がやらないなら、新聞販売店のチャンスだ。高齢者家庭との結びつきがこれほど強い仕事もない。「毎月1200円で、お孫さんのところへ書籍を届けます」というチラシを配ったら、かなりの確率でサービスを利用する人が出てくるだろう。新聞社が選んでくれるなら本の内容に間違いはないという安心感もあるはずだ。

 孫の側は、おじいさんおばあさんにもらった本は読まなくてはならないと思うだろう。そして会ったときに、本の話をするかもしれない。そのときにおじいさんおばあさんがその本を読んだことがないとなると、ちょっと格好がつかない。なので、毎月、孫に本を届けると同時に、おじいさんおばあさんの方には、その本のダイジェストやまつわる蘊蓄をまとめて届ければいい。

 大手新聞社の販売店の総従業員数は7万人を超えているという。もし一人がひとつでも契約を取れば、そこに1カ月で7万冊超えのベストセラーが誕生する。今時、これだけ売れる本はカズオ・イシグロくらいしか思いつかない。

 見方を変えれば、先細りしていくしかないような販路にも、大きなビジネスチャンスがある。販路や顧客に変化がなくても、時代が変わっているからだ。新しいことに興味を持たなければ、その変化には気付けない。