その意味では私のコラムも、一種の娯楽かもしれない。そう考えたらつい、おさまりが悪いことも時には書き、読む方に問いかけたい気持ちがわいてきた。

 ベッドに寝ていると時々、へそのわきにある人工肛門から便がもれ出す。便と連想するあの匂いはないけど、固形物が混じったどろどろの色水だから、コップ一杯のジュースをこぼしたぐらいの騒ぎにはなる。寝転んだまま両足をあげ、下着とズボンにはき替える。この姿、何かに似ているなと思ったら、小学生のころに飼っていたカブトムシだった。

 おがくずの上にひっくり返ったまま6本の足をキシキシいわせる。やがて電池が切れたように止まる姿は将来の私だ。

 さて、あなたの死はどうだろうか。

「死」を意識しないですむのは幸せだが、意識してはじめて味わえる幸せもあると痛感する。だから、心地よくはないだろうけど、重ねてお尋ねしたい。

 誰もが一つずつ持っている寿命の砂時計。終わりに向かって今もサラサラと落ち続ける、その音が聞こえますか。

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野上祐

野上祐

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

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