「難治がん」の記者 思い立った時、自分に確かめる「俺は死ぬんだぞ?」のつぶやき (2/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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「難治がん」の記者 思い立った時、自分に確かめる「俺は死ぬんだぞ?」のつぶやき

連載「書かずに死ねるか――「難治がん」と闘う記者」

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野上祐さん

野上祐さん

病室で隣の男性と自分を隔てるのは薄いカーテンだけだった(※イメージ写真)

病室で隣の男性と自分を隔てるのは薄いカーテンだけだった(※イメージ写真)

 差額ベッド代を払って静かな個室に移ることはできる。しかし、それは自分の将来から目を背けることに思えた。この夜を忘れまいと、消灯後の闇の中でノートに書きつけた。

 なおも続く叫び声と、私。隔てているのは、風に揺れる薄いカーテンだけだ。

●心地よいのは強い抗がん剤を使えなくなったから

 後輩記者が3人連れで見舞いにきたのは、ちょうどそのころだ。

「あれに野上さんがかなり怒っているんじゃないかっていう、ブラックジョークがありまして……」

 自民党議員の「このハゲ」発言だった。

 病院内には「すごいよね」と言いながらまねる中年女性がいた。ヒステリックな音声がテレビから聞こえてくるたびに笑いが込み上げてきたが、後輩のひと言で我に返った。

 そうか、俺もハゲだった。

 その頭も今はふわふわとした髪の毛に覆われている。長らく付き合ってきた手足の指先のしびれは弱まり、貧血や、おなかが絞られるような痛みもなくなった。3日前、用事で勤め先を数カ月ぶりに訪れると上司から「今までで一番調子がよさそうだ」と言われた。


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