「夫はトイレの配管や電化製品の故障を直してくれるけれど、私がしてほしいのはそういうことじゃない。もっとコミュニケーションがしたいんです」

 そんな不満いっぱいの妻たちにアドバイスするのは「気まぐれ定年塾」を主宰する作家の西田小夜子さんだ。西田さんは定年夫に関する妻の悩みを20年聞いてきた。

「『夫が私を下に見てこき使う』『ずっと家に居る夫が邪魔』……。残念ながら、妻の不満の内容はほとんど変わっていません。ここは妻が賢く振る舞いましょう。なにせ定年直後の夫は『定年夫1年生』。そんな夫を育てられるのはあなたしかいないんです」

 特に会社員の夫の場合、ひたすら会社と家の往復をしてきた。突然「さあ、ご自由に」と言われても何をしたらいいのかわからず、夫自身が戸惑っているはずだという。まず、地域にネットワークのある妻が、夫が好きそうな趣味のサークルや市民大学の講座を見つけてすすめてあげる。そして家事を頼み、やり終えたらすかさず「この味つけ最高!」「台所ぴかぴかね。私よりずっと上手!」とおだてる。気長に取り組むことが大事だという。

「さじを投げたくなる気持ちはよくわかりますが、離婚を早まらないでください。経済的に自立できるかをよく考えて。殺したいほどいやな相手でなければ、何とか折り合いをつけましょう。ただし我慢はだめ。今後を有意義に過ごしたいなら、あなたの本音を、穏やかに、しかしきっぱりと伝えましょう。あなたが何も希望を伝えなければ、死ぬまで何も変わりませんよ」

(文/村上雪)

※「ゆとりら秋冬号」から一部抜粋して編集