「(チームの)みんなは1番がいいと思っていると思いますよ。(報道陣の)みんなもそう思っているんでしょ? 急に3番になったら、ね? 予告先発じゃないからどっちがいいか……だけど。でも、左(投手)だからといって急に変えることもないでしょ」

 藤本打撃コーチも「1番やろ、柳田は」。必然的にクリーンアップもFS第5戦と同じく、3番にデスパイネ、4番は内川、5番中村晃の「並びは変わらんだろうな」と同コーチ。相手先発が左なら、川島慶三、吉村裕基、右なら長谷川勇也、上林誠知。その起用法によって6番以降の下位打線の組み合わせが変わることはあっても、軸は不変。誰が来ても動じることはない。それがベストメンバーを組める今のホークスの強みなのだ。

 パのCS8戦中7戦で先制点を取ったチームが勝利を収めている。今季54セーブを挙げた守護神デニス・サファテが君臨するリリーフ陣はFS5試合、計16回3分の1を無失点。レギュラーシーズンでも先制した試合は73勝9敗。先行して、逃げ切る。このパターンにいかにして持ち込むかが勝利のカギになる。

 一方、DeNAはCSでの8試合でチーム打率300、39得点。FS突破を果たした広島との第5戦では、チーム7本塁打を放った猛打が工藤監督には印象的だったようで「パのCSは先取点を取ったチームが有利だった。でも、セのCSは点を取ってもDeNAがすぐに逆転していた」と警戒は怠らないが「それぞれ特徴があるけど、僕たちは、僕たちの野球をするだけ。先取点を取って、6回以降は万全のリリーフ陣で守り抜いて勝つことです」とシリーズの戦略も明確だ。

 最後の最後に、自慢のフルメンバーが揃った。自分たちの『型』を貫けば、負けるはずがない──。2年ぶりの日本一奪回へ。工藤ホークスはまさしく、準備万端のようだ。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。