「クラス中から無視されて悪口を言われていましたが、先生の対応は、ある生徒と握手させられただけ。その後、いじめはひどくなりましたが何の対応もなかったです」(18歳・女性)

「同級生に先生が注意しただけで、いじめは先生から見えないところで続きました」(15歳・男性)

「先生から『いじめなんかどこにでもあるんだから』と言われるだけで、なにもしてくれませんでした」(17歳・女性)※年齢はすべて取材当時の年齢。

 先生の眼からは「いじめが解消した」ように見えても「現実はちがう」という趣旨の声がもっとも多かったです。

 問題は「先生の誤解」だけではすみません。先生の眼からは「いじめは解消した」という状況は、子どもがいじめに耐えながら登校を続けなければいけないからです。そんな経験をした人の手記がある講演会で読み上げられました。

「あなたはいじめの実態を知っていますか。あなたは学校へ行けば100%いじめられるとわかっていて登校する恐怖がわかりますか。上履きがなくなっているかもしれない、自分の机にマジックで落書がしてあるかもしれない。そんな不安におびえながら登校した経験なんて一度だってありはしないでしょう。毎日毎日『どうやって死のうか』とそれしか考えられない時期が私にはありました。『学校へ行きたくない』と思わなかった日は一日としてありませんでした。だからといって、私は登校拒否がいいこととは思っていません。何があろうと学校へ行くべきだと思っていました。社会に適応するために、つらさに耐えなければならないと思っていたからです」

 いじめ経験者たちの声から想像すると、いじめを受けた99.7%の人は「避難せずにすんだ人」ではなく「避難したくてもできなかった」のかもしれません。

 小中学生・高校生の年間自殺者は244人。前年度比で29人増です。彼らは「避難したくてもできなかった」のではないでしょうか。避難したくてもできないという状況は、とても危険な状況だと思うのです。

■調査結果のポイント

 あらためて、いじめに関する調査結果のポイントを整理します。

(1)いじめの認知件数が急増し、初めて30万件を越えた

(2)発生率に地域格差があり、その差は最大19.4倍だった

(3)「緊急避難者」は0.3%だった。

「避難としての欠席」が全体の0.3%に止まったことについて文科省は「くわしい分析はしていません」とのこと。みなさんは、この「0.3%」を、どう思いますか?(石井志昂)

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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