老け込んだ親の姿にハッとしたことはありませんか? そんな親のきもちや行動を、もしかしたら私たちは誤解しているかもしれません。大阪大学大学院教授で、老年行動学を専門とする佐藤眞一先生のやさしい文章と、まんが家・北川なつさんのマンガで、老いた親のきもちをわかりやすく解説した『マンガで笑ってほっこり 老いた親のきもちがわかる本』(朝日新聞出版)から、いくつかのアドバイスを紹介します。第8回は「着なくなった子どもの服を着るのが不思議」です。

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 親が着ている服をよくよく見ると、自分が学生時代、体育の授業で着ていたジャージ。部屋着にするならまだしも、この姿で人前に出てしまうのは理解に苦しみますよね。どうして高齢の親は子どもの服を、しかも着なくなった昔の服を着るのでしょうか。

 これには、衣服に対する考え方の違いが関わっています。高齢の親の中には、幼少の頃、普段の衣服は「お下がり」をもらって着るものだったという人が多いはず。本当に特別なときだけ、新しいものを買ってもらえるというスタイルだったのです。

 そんな時代を生きてきた親にとって、最近のファストファッション(短いサイクルで販売する、安価な衣服)はなじみがありません。破れたところに継ぎを当て、長く着てきた高齢者にとっては「破れてもいないのに、捨ててしまう」という感覚がよくわからないのです。ジャージは丈夫に作ってありますし、着ていてラクですから、そんな快適なものをわざわざ捨てるのはもったいないと考えるのでしょう。ものを大事にしていた時代の精神が、まだ高齢者には残っているのです。

 現代はエコを重視する一面もあります。親が子どもの服をリユースして着ているのは、まさにエコ活動なのです。

【Happyアドバイス】
高齢の親は、自分用の服が少ないかも。
何かの機会にプレゼントしてみよう。