普通に聞くと、同じことを3回も言わせてと思うかもしれないが、実はこれが相手を逃がさない大事なコツなのだ。小池氏は、3回も回答を逃げたことで、その後の党代表としての会見で、横田氏の質問から逃げられなくなった。もし、最初の質問だけで引き下がっていたら、後の会見で小池氏は横田氏を指名しなかった可能性が高い。

 その後の党代表としての会見では、概ね、次のようなやり取りがあった。

横田 前原代表が昨日発言した「(希望の党に)公認申請をすれば、排除されない」ということについて小池知事・代表は、安保、改憲で一致する人のみを公認すると、前原代表を騙したのか、(あるいは)共謀して「リベラル派大量虐殺、公認拒否」とも言われているが。

小池 前原代表がどういう発言をしたのか、承知をいたしておりませんけれども、排除されないということはございませんで、排除いたします。というか、取捨というか、絞らせていただきます。

■小池モンスターに自らも騙された小池氏

 横田氏が知事会見に続き、2度目も「排除」という言葉を使って質問したのに対して、思わず、小池氏が「排除する」と明言してしまった。小池氏が横田氏を当てたのは、逃げていると言われるのが嫌だという負けず嫌いなところが出たのだろう。最初のしつこい追及が功を奏したと言える。

 小池氏自身、小池モンスターの勢いを信じて、フリーの記者ごときが何を書いても大したことにはならないと思ったのかもしれない。一瞬の気のゆるみと驕りが出た瞬間だが、これも小池モンスター・イフェクトと言っても良い。自らもそれに騙されたのだ。

 しかし、さすが、小池氏。この言葉を発した瞬間にまずいと気付いている。話を切ることなく、「取捨」とか「絞る」という言葉に置き換えようとした。だが、テレビや新聞は好きなところを切り取って報道する。「排除いたします」という部分だけが繰り返しテレビに流されて、一気に小池批判が高まった。

 身内の記者クラブの記者の質問なら、「排除などではなく、現在政策のすり合わせをしているところだ」というように余裕をもって模範解答できたであろう。そのうえで、政策の一致が難しくてどうしても合意できないという議員が自分で合流を断ったというシナリオにすれば、「排除」批判が燃え盛ることはなかったかもしれない。その意味で、執拗な質問によって、失言となる小池氏のホンネを引き出した横田氏の功績は大きい。

■小池モンスターの勢いはまだ続く

 ただし、この排除発言によってもまだフェイクニュースが完全に正されたわけではない。それは、小池氏のタカ派で独裁者的な性格は明らかになったが、「改革派ではない」という真実はまだ明かされていないからだ。小池氏を改革派だと誤信した市民のうち、タカ派の改革派は未だに小池モンスターを信じている。今後、改革派ではないということがわかって、この虚像が崩れれば、小池人気は雲散霧消するだろう。小池氏の本質は自民党の安倍総理と同じ、「改革できないタカ派」だということになり、存在意義が全くなくなるからだ。

 安倍総理の支持率急落の一つのきっかけを作った望月記者。小池モンスターの虚構を暴くきっかけになった横田記者。いずれも、記者クラブに属さないアウトサイダーが日本の政治報道のウソと歪みを正してくれた。

 ここで、冒頭の疑問に立ち戻る。

――今日の政治の混乱を招いた最大の戦犯は、実はマスコミではないのか。―― 

 日本のマスコミが再生しない限り、日本の政治は良くならない。私は、今、このことをあらためて痛感している。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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