残り4試合となった今年6月から、監督はホルヘ・サンパオリに代わった。彼はチリ代表を率い、15年のコパ・アメリカを制した男。つまり、マルティーノを辞任に追い込んだ男だ。それだけに期待されたが、結果は1勝3分け。自信を失ったチームを立て直すことはできなかった。今予選でアルゼンチンが不振だった最大の要因は、得点力不足に他ならない。18試合を戦い、わずか19得点しか挙げていない。これはボリビアの16得点に次ぐワースト2の数字だ。前回の予選は開催国のブラジルが参加しなかったため、16試合と今回より2試合少ないのに、アルゼンチンは35得点をマークしていた。1試合平均2.18だったものが、1.05になってしまった。今予選、0-0の引き分けが3試合、1-1は2試合あった。この5試合のうち一つでも勝っていれば勝ち点2がプラスされ、ここまで苦しむことはなかった。

 アルゼンチンは歴史的に見ても南米の強豪だ。しかも、現在のチームにはメッシがいる。したがって、ブラジルとウルグアイ以外の対戦相手は極端に守備的になる。強かった頃のアルゼンチンはこれに対し、両サイドバックを常に上げていた。純粋に守備を担当するのはセンターバック2人とボランチの計3名。攻撃に7名を投入することで、局面において数的有利を作ることができ、その結果、フリーの選手が頻繁に生まれた。フリーの選手の出現により相手は慌て、マークがずれる。そこを突いてアルゼンチンは得点を重ねていた。しかしこの戦術は、ボランチへの負担が大きい。相手がカウンターを仕掛けてきたら、素早く反応してその芽を摘み取らねばならない。この大役を果たしてきたのはハビエル・マスチェラーノだが、33歳を迎えた彼の状態が以前とは違ってきた。19歳からトップレベルで身体を酷使し続けているため、コンディションはかなり悪い。局面での対応とプレーの読みは相変わらずのクオリティーだが、カバーできるエリアは狭くなっている。そのため、サイドバックはむやみに上がれない。マスチェラーノの負担を減らすためダブルボランチにすれば、攻撃的ミッドフィルダーを1枚減らさなければならない。つまり、以前のような数的優位が作れなくなり、フリーの選手の出現も激減した。

 それでも能力に優れるアルゼンチンの攻撃陣は、多くのシュートチャンスを作り出してきた。得点は挙げられなくとも、シュートは山ほど打っているのだ。しかしフリーの選手が絡まないため、相手が慌てることはない。つまり、予測されたシュートなのだ。したがって、ゴールキーパーは防ぎやすい。それでもゴールネットを揺らすためには、シュートの強さと正確性が必要となる。アルゼンチンの選手はギリギリのコースを狙い、枠をわずかに外したり、ポストに嫌われるということを繰り返した。そして最終的には、シュートに対する自信喪失という状況に陥った。それにしても、あれほど入らないのも普通ではない。何かの呪いではないかと思うほどの不運続きだった。最終節でメッシが魅せたハットトリックは、いずれも見事なゴール。これが厄払いの効果を果たし攻撃陣が自信を取り戻せば、本大会に向けて良化していくだろう。(文・ホルヘ・三村)