その原因は両監督が指摘したように、日本には試合状況に応じてゲームをコントロールできるリーダーが不在だったからだ。もしもピッチに吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)がいたら違った展開になっていたかもしれない。そして改めて感じたのが、キャプテンシーのある長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)や本田圭佑(パチューカ/メキシコ)らの存在感だ。

 ハイチ戦のスタメンは自分自身のプレーを表現するのが精いっぱいで、チームとして相手の変化に対処しようという共通意識がなかった。ただ、そのための実戦経験が不足していたのも見逃せない事実ではある。

 さて日本は、11月の欧州遠征でブラジルとベルギーというワールドカップ出場を決めた強豪と対戦する。コンディションが戻っていれば長谷部、本田と岡崎慎司(レスター/イングランド)、それに負傷中の柴崎岳(ヘタフェ/スペイン)も状態が良ければ招集されるだろう。特に攻撃陣にとってはサバイバルマッチとなることは間違いない。

 過去の例から、FW陣でワールドカップメンバーに選出されるのは、3つのポジションにそれぞれふたりの計6人がマックスだ。左サイドなら攻守に戦闘的な原口、ドリブラーの乾、裏に抜けるプレーとポストもできる武藤嘉紀(マインツ/ドイツ)と激戦区だし、右サイドはスピードの浅野拓磨(シュツットガルト/ドイツ)、オールラウンダーの久保裕也(ヘント/ベルギー)、決定力の高い本田、そして1トップはポストプレーに長けた大迫勇也(ケルン/ドイツ)、そして現役代表最多得点の岡崎に、今回初ゴールを決めた杉本がいる。さらにトップ下は香川と柴崎に加え、小林祐希(ヘーレンフェーン/オランダ)も台頭してきた。

 彼らの競争は楽しみである。ただ、ワールドカップ・アジア2次予選のアウェー・カンボジア戦後、長谷部と本田が違う表現ながら、後継者となる若手選手の台頭がないことに不安を口にしていた。リーダーシップを発揮し、チームを牽引できる選手の不在である。それが顕著になったことが、ハイチ戦の収穫かもしれない。

 11月の招集メンバーは23名とは限らないかもしれないが、戦力としての実力はもちろん、次代のリーダーを発掘できるのか。個人的には、現有戦力では昌子源(鹿島アントラーズ)に期待している。(サッカージャーナリスト・六川亨)