国内組では大島僚太が組み立てのセンスに加え、今シーズンは守備の成長も目覚ましいが、しばしばハリルホジッチ監督が指摘するように、代表チームにおけるコミュニケーションに不安はある。

 リズムに乗れている時間帯はいいが、悪い流れから持ち直すために全体を引き上げるプレーや、パーソナリティーを一朝一夕で身に付けることは不可能に近いだろう。今から経験を積むことができれば理想的だが、代表招集のタイミングで筋肉系のけがが続いており、チームのベースに組み込むには時間が少なくなってきている。

 現メンバー内では、小林は長谷部に近い役割をこなせる素地がある。中盤で動きながらボールを捌く能力が高く、守備のスキルもオランダで習得している。試合の流れを読み、状況に応じた判断をしていく意識とセンスを備える。もちろん、ゲームコントロールの部分で百戦錬磨の長谷部と同じ仕事を期待することはできないが、将来性も含めて中盤の要になっていく資質が見込まれる。

 ワールドカップ予選で招集された高萩洋次郎は正確なパスを操り、かつ状況に応じたプレー選択で単調になりがちな攻撃に良いリズムを生めるかもしれない。アジア圏内ながら国際経験が豊富であることも、特にこのポジションでは他の新戦力よりアドバンテージにはなる。ハリルホジッチ監督は「守備に少し課題がある」と語るが、もう1つ課題になるのは代表チームにおけるパーソナリティーだろう。順当なら年末の『EAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会』では主力になることが予想されるだけに、まずはそこでアピールしていくことが重要になりそうだ。

 もちろん、アウェーのUAE戦で救世主的な活躍をした今野泰幸の存在も忘れてはいけない。今野は長谷部のようなオフ・ザ・ピッチを含めたキャプテンシーはないと自認するが、ゲームを読んで状況を判断する能力が高く、守備のオーガナイズは長谷部に勝るとも劣らない。実際にハリルホジッチ監督が、長谷部を欠く場合は今野が選択肢になるとコメントしており、本大会に向けても候補であることに変わりはない。ただ、彼の状態が本大会までにどれだけ良くなるかは不透明のため、頼りすぎずに様子を見ていく必要がある。

 ここから本大会までの8カ月間、攻撃や守備のオプションを増やしていく作業はハリルホジッチ監督も意欲的に行うだろうし、すでに目を付けている選手もいるはずだ。

 一方でチームのベース、特に攻守の要となるボランチにおいてゲームコントロールができる選手を探し、組み込む作業は一筋縄では行かないだろう。中盤のインテンシティが高い相手に対しては依然、山口や井手口が有効なチョイスになるであろうが、長谷部を欠く状況も含めた中盤のオーガナイズを構築していくことが求められる。(文・河治良幸)