しかし、そうした時間帯に決め切ることができず20分を過ぎると、香川真司、井手口、山口の三枚に対するニュージーランドのマークが明確になり、ボールを持てばロングボールを使って日本のディフェンスに下がりながらの対応を強いたため、日本の中盤が縦に間延びしていった。

 そうした状況で中盤がボールをつなげなくなり、攻撃が停滞したまま前半の時間が経過した。吉田麻也のロングパスが前線に通り、大きなチャンスになることもあったため、そうした停滞が目立たない側面は多少あったものの、序盤のような連動性のある攻撃は見られなくなった。

 全体を押し上げ直した後半の立ち上がり、スローインの流れから相手のハンドでPKを獲得してようやく先制するが、ロングボールを起点に再び押し込まれると、セカンドボールを拾われた展開から左サイドを突かれて失点を喫した。

 終盤は乾貴士や小林祐希などフレッシュな選手の投入とシステム変更により、運動量の低下したニュージーランドの守備を翻弄したが、監督が授ける戦い方をベースとしながら臨機応変にプレーするには、ゲームコントロールをしっかりできる選手の存在が重要になる。

 もっとも、本来ゲームコントロールの能力というのは、選手のプレースタイルに関係なく持っているに越したことはない。常に味方からボールを集めてキープし、長短のパスをつなぐこともその一部かもしれないが、そういったものだけが『ゲームコントロール』を表すわけではない。また、どれだけ判断力が高くても、周りに伝えるコミュニケーション力に優れていなければ、全体にイメージを共有させることは難しい。

 ニュージーランド戦に関しては香川の言うように、左サイドで先発した武藤の手前に大きなスペースがあった。武藤いわく「相手のサイドバックが付いていけていなかった」ことから、その手前に香川が流れて起点になれば、前半の停滞した時間帯にもっと連続的に良い形を作れたかもしれない。そうした空間的な状況判断は長谷部などがいなくても、例えば武藤と香川の間で共有できる関係を築いていく必要がある。

 しかし全体として、今は押し上げるべきか、引くべきか、落ちつかせるべきかといったベクトルを示すには、ゲームコントロールのできる選手が必要になる。最終ラインはセンターバックの吉田麻也が統率するが、前線まで意識を影響させることは難しい。常に攻守に関われるボランチが適任なのだ。

 長谷部の代わりが務まるほどのゲームコントロール力を備える選手はそういないが、柴崎岳は組み立てのセンスが高いだけでなく、状況に応じたゲームコントロールができる選手の1人だ。

 ただ、スペインでは、より攻撃的なポジションで起用されることが多く、世界基準でボランチをこなすには守備に課題があるように見える。彼の場合はアンカーやボランチに長谷部がいる前提で、インサイドハーフやトップ下でプレーした方が持ち味を発揮しやすいだろう。

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