まずは自分なりに、投票先を選ぶ基準に優先順位をつける。そのうえで、目の前にいる候補者の背後にある全体像にも目を配る。そのふたつが大切だ。

 私は新聞記者だから、政治の記事を参考にしてほしい、と考える。せめて投票する当日、できれば数日前から目を通してくれたら、と思う。もちろん、いますぐ読み出してもらったほうがいいのだ。ただ、まだ慣れないだろうから、投票日までにあきたり、ひょっとしたら政党のごたごたぶりに投票そのものが嫌になったりしてしまうかもしれない。でも棄権はすべきでない。せめて当日と言ったのは、そういう意味だ。

 何を今さらと君は思うかもしれない。それでも、今回の選挙はとても大切だと思うから、伝えておきたいのだ。

*  *  *

「3分の2」と「2分の1」。これは私にとって政治だけではなく、命に関わる数字だった。出血多量に陥ることなくがんを切除し、完治への道が開けるかどうか。その境目となる太い血管の巻き付き具合を、この数字は指していた。

 社会のありようと自らの生き死。ふたつの「質」の変化が同じ数字をめぐって交錯すると昨年の参院選前に気づいたときは、因果なものだと思った。

「数字だった」と過去形で書いたのは、いまや治療の面ではあまり意味がなくなったからだ。最近はもっぱら政治のことで頭に浮かべている。

 先日、秋口に入って初めて部屋に電気ストーブをつけた。体温調整がうまくできないせいか、季節の変わり目がじかに体に響く。あと数週間もすれば、と思う。福島で働いていたとき、遠くに眺め、たびたび訪れもした吾妻山に初雪が舞うだろう。

※3R
リデュース(reduce)=ものを大切に使い、ゴミを減らすこと。
リユース(reuse)=使えるものは繰り返し使うこと。
リサイクル(recycle)=ゴミを資源として再び利用すること。

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野上祐

野上祐

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

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