こうした選手たちの成長の足取りを見ても分かるように、ソフトバンクは潤沢な資金に任せて、ただ選手をかき集めているのではない。

 昨年3月には2、3軍の練習場として、福岡県筑後市に『HAWKSベースボールパーク筑後』が完成。メーンスタジアムの『タマホーム スタジアム筑後』は1軍本拠地のヤフオクドームと同じスケールに造られ、サブ球場と屋内練習場、合宿所、クラブハウスも完備している。この育成の一大拠点をベースに、3軍タマホーム スタジアム筑後は昨年60試合をこなした。

 2011年の3軍発足時からスタートさせている独立リーグの四国アイランドリーグとの交流戦では、博多から四国4県への遠征はすべてバス移動。ナイター終了後にバスに乗り込み、早朝に福岡に到着する厳しいスケジュールも強いられる。そこには経費節減の意味合いだけでなく、若手選手たちのハングリー精神を刺激する狙いもある。

 3軍発足の2011年以後の7年で、4度のリーグ制覇を成し遂げたソフトバンク。そこには、甲斐や千賀のように育成枠から飛躍を遂げた叩き上げの戦力も、大きく寄与している。逸材の発掘、丹念な指導、そして豊富な実戦機会を通して、心身を鍛え上げていく――。

 1、2、3軍の“3層システム”を存分に活用させることで育成の好循環を生み出した、球団のたゆまぬ投資と努力。それが、他球団の追随を許さない圧倒的な強さと豊富な戦力層の“源泉”なのだろう。(文・喜瀬雅則)