■「DNA呼吸法」とは

 Aさんも試した「DNA呼吸法」、実際の手順は次の通りです。

1.呼吸姿勢を作る。
まず椅子に座る。骨盤から折るイメージで、上半身を前に倒す。背骨を気持ちよく伸ばしながら、上半身を元の位置に戻す。首、肩を上下左右に揺らして、脱力する。丹田(腰骨のお椀の中心)に重みを感じ、背骨に体重を乗せ、筋肉にはできるだけ力が入ってない状態を心がける。

2.胸の息を吐く(1秒)。ため息をつく感じ。ただし姿勢はあまり崩さない。安心したときのように、「ホーッ」と声を出してもいい。胸や背中の脱力を意識する。呼吸と同時に「大丈夫(D)」と心の中でつぶやく。

3.ため息に引き続いて、さらに呼吸を吐いていく(6秒)。下腹をへこませながら、胸はむしろ位置を上げていく感じ。ただし胸は脱力した状態で。息を吐きながら「何とかなる(N)」と連続でつぶやく。

4.吐ききったところで、「明らかにしよう、よく見よう(A)」とつぶやきながら、お尻の穴を締める。このときも再度、胸と背中の脱力を意識。

5.反動で吸う。軽く息継ぎを1回から2回した後、軽く吸って2に戻る。

以上のセットを5回行います。

「DNA呼吸法」とは、「大丈夫(D)」「何とかなる(N)」「明らかにしよう、よく見よう(A)」という言葉の頭文字をとったもの。学術的な深い意味はないので、あまり言葉の意味を意識しないで、呪文のように唱えてください。

 しかし、これがなぜ感情に“効く”のでしょうか。

 実は、この呼吸法は、わざと難しくしてあります。手順が多いので、呼吸や体に意識を向けなければならない。つまり、「感情」から気持ちがそれる。また、胸、背中の脱力も図るので、腹式呼吸をしているうちにある程度、全体的なリラックスもできるようになります。

 呼吸の時間はあくまでも目安です。自分のやりたいようにやって構いません。要は、自分に合う呼吸を見つければいいのです。結構疲れるので、連続してやらずに、1日3回ぐらいまでがちょうどいいでしょう。

 この呼吸法は、不安や怒りを、たちどころに解消するものではありません。けれども、少し、感情を下げることができる。感情では“少しだけ下げる”というのが、実はとても重要なポイント。

 例えば、水が、コップのふちまでいっぱいに満たされていたら、そのコップは動かせません。でも、ほんの少し水が減れば、ゆっくりでも持ち運ぶことはできます。少しの余裕さえあれば、人は、次の行動に向かうことができるんです。

 カチン!と来たら、ほんの少しだけ、感情を下げる。そのイメージで「DNA呼吸法」を試してみてください。(構成・文/向山奈央子)