結局、監督が代わったこともあって、長谷部はチームに復帰、再びピッチに立ちはじめる。

 もちろん、その後も、試練がなかったわけではない。ひとつは、アスリートにはつきものであるケガ。2014年に右膝の半月板を傷め手術。そして、今年の3月11日には右膝を傷めやはりメスを入れ、結局8月の復帰までに5カ月もの日数を要したのだ。

「ケガにもいろいろな種類があって、自分のなかでは筋肉系のケガはある程度予防できるものだと思っているんです。ただ、今回のケガは事故みたいなものだし、起きてしまったものは仕方がないと割り切れるものがあったんです。だから、あとはとにかくできるだけ早くピッチに戻ることだけを考えよう、戻るときにもできるだけ何かを吸収するという心だけは忘れないで、選手としてプラスになって戻りたいなと思ってました。たとえば、スタジアムで試合を見るときに、サポーターの方々の顔とか動作とか一挙手一投足を観察したり。試合当日に働いているボランティアの方の活動を見たり。プレーしているときには目にすることのできないことを見て、また頑張るというモチベーションにつなげていこうと思っていましたね」

 視野が狭まりがちな状況のなかで、逆にそれを広げ、成長の場へと変えてしまうメンタリティー。長谷部の強さはまさにそこにある。(文・一志治夫)

※アエラスタイルマガジン 36号より抜粋