コンシェルジュの女性たちは元キャビンアテンダントという設定です。現実に僕の友人が入っているある老人ホームへお見舞いに行った時、働く人々がすごくパリッとしていた。聞けば、そのホームではJALが破綻した時にキャビンアテンダントをスカウトしたそうなんです。これはすごいと思ってそのシステムをそのまま盗みました(笑)。裏方スタッフを犯罪の更生者にしたのは、別の意味で、就職に苦労する犯罪更生者を使おうということが僕の中にずっとあったからです。  

「やすらぎの郷」には視聴ルームがあります。そこで自分の出演作を見る人もいるだろうし、音楽を聴く人もいる。まだ脂っ気が抜けないやつらはじじいバンドを作っています。なんていうのかな、人生の末期を過ごすイメージは個人個人違うと思うんです。ホームでサークルを作ってもいいんだけど、勧誘はしない。「入りませんか」ではなくて入りたければ来る。みんな自由でやめたければやめていく。

 やめたきゃやめていくというのは、死んじゃったからやめるというのと同じ。死にたいから死ぬというわけではないでしょ。体が疲れたからもう出られない。あぁこのごろ来ないね、あぁ疲れているんだね、あぁあいつ死んだってさ、という感覚ですよね。

(文/坂口さゆり)