木村氏は、次のような指標を挙げて受験生の心構えを説く。主なデータは公開が義務づけられているので、各大学のホームページで見つかるという。木村氏が示す指標を見ていこう。

●「収容定員充足率」に注目。これは全学部全学年の定員に対する、在籍学生数の比率だ。100%を下回れば定員割れで、大規模の人気私立大学でも100%を切るところがある。小規模私大では、40%台や30%台という悲惨な例さえある。そんな大学は当然、「退場間近」と見てよい。

●入試でセンター試験利用の志願者が全志願者の40%を大きく超えている私立大もあまり感心できない。一般入試の募集力が弱いことの裏返しであるからだ。見かけよりもブランド力が劣化してきた兆しといえる。

●AO入試や推薦入学のウエイトが高すぎる私大は苦しくなる。2020年から実施予定の入試改革に対応できなくなる恐れがあるからだ。この入試改革で、AOや推薦にも共通テストや小論文などが必須になる。また、AO・推薦の合格発表の日程も後ろにずれるから、これまでのような早期の入学者確保作戦はピンチになる。

●専任教員比率があまりに低い大学は、少人数教育の「アクティブラーニング」に対応しにくい。現在、医療系は、60~70%台、芸術系は低く20~30%台が平均的。有力私大の文系でも30%程度のところがあるので、比較検討しよう。

●国立大への「運営費交付金」の増減推移を調べよう。地方国立大の文系と教員養成系は、今後さらに厳しい状況になりそう。文科省からの「運営費交付金」が削減される傾向が明らかだからだ。教員養成系学部は統合され、将来、出身学部がなくなる可能性もある。

●最近は地元就職を希望する受験生も増加しているが、地元にどのような産業や企業があるか、その将来性について研究しておこう。地方大学では地域活性化の担い手として地元の企業とプロジェクトを組むケースが急増している。地方での志望校選びでは、地元有力企業とどのように連携しているかが重要な調査ポイントになる。

 情報公開が義務付けられていないデータについては、「大学ポートレート」や大学のホームページ以外の、例えば『大学ランキング』など、年度版出版物も参考にするといいだろう。さらに木村氏は次のメッセージを贈る。

「受験生や保護者の皆さんには入試情報だけでなく、大学の実態も具体的に調べて後悔しない志望校選びをしてほしい。将来、『姿も名前も消えた大学のOB・OG』になってしまわないために――」

(文/星政明)