(4)人気の仏像「天」部

 これまでの如来、菩薩、明王は、言い換えればシャカのその時々にある変化形ともいえるが、“天”のつく仏像は、基本的にはインドの神々から生まれた仏である。たとえば、弁財天、大黒天、帝釈天、毘沙門天、韋駄天、摩利支天など。それぞれが特徴のある姿をしているため、独特のご利益があるとして信仰され、日本では特に人気が高い。また、四天王(持国天、増長天、広目天、多聞天<毘沙門天>)のように上位の仏像を守護する役目も担っている。

●数えきれないほどの仏の種類

 上記の4分類以外を「その他」にまとめてしまうのもなんだが、仏像としてほかにも「羅漢(釈迦の弟子たち)」「高僧」「眷属」「権現」「地獄王」「荒神」などがある。その数、百万とも千万とも言われているがはっきり言って定かではない。

 仏像は、インドのガンダーラ地方やマトゥーラ地方で盛んに作られはじめたもので、日本に仏教が伝えられたのは飛鳥時代、同時に大陸文化の影響を受けた仏像が国内でも造られ始めた。やがて、南アジアやインドの影響を受けた姿のものや、石造り・漆塗りなどの技法を取り入れた仏像造りにも発展、平安時代には和様の姿も表現されるようになる。

●運慶に始まった写実的な仏像造り

 平安時代末期に運慶という日本で最も有名な仏師が誕生、「玉眼(ぎょくがん)」を使い、生きているかのような写実的な仏像を生み出す。東大寺南大門の金剛力士(仁王)像に代表される力強い姿は、それまでの日本の仏像造りとは一線を画した。

 多くの弟子を使いあまたの作品を作ったと言われている運慶だが、驚くことに「運慶作」と考えられている仏像は30体ほどしか残されていない。

 実はこの「運慶作」を一堂に会した展覧会が東京で開催されることになった。奈良・興福寺の中金堂再建記念事業として企画されたこのイベント、平家の兵火で焼け落ちた興福寺の再興に尽力した運慶にとっては、本望ともいえる企画だろう。

 興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」は、2017年9月26日(火)から11月26日(日)まで「東京国立博物館 平成館」で開催される。今回は運慶作として現存する最古作の国宝仏・大日如来坐像(奈良・円成寺蔵)をはじめ、「玉眼」がはっきり見てとれる国宝仏・毘沙門天立像(静岡・願成就院蔵)など鳥肌ものの仏像が勢ぞろいする。これらを所蔵するお寺で拝顔しようしたら、いったいどれくらいの時間と旅が必要だろう。ちょっとでも仏像に興味のある人ならば、是非見ておく価値のある展覧会である。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

著者プロフィールを見る
鈴子

鈴子

昭和生まれのライター&編集者。神社仏閣とパワースポットに関するブログ「東京のパワースポットを歩く」(https://tokyopowerspot.com/blog/)が好評。著書に「怨霊退散! TOKYO最強パワースポットを歩く!東東京編/西東京編」(ファミマ・ドット・コム)、「開運ご利益東京・下町散歩 」(Gakken Mook)、「山手線と総武線で「金運」さんぽ!! 」「大江戸線で『縁結び』さんぽ!!」(いずれも新翠舎電子書籍)など。得意ジャンルはほかに欧米を中心とした海外テレビドラマ。ハワイ好き

鈴子の記事一覧はこちら