全国各地で続く集中豪雨による被害。報道されるたびに耳にするようになった「線状降水帯」とは何なのだろうか? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、サイエンスライター・上浪春海さんの解説を紹介しよう。

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 7月5、6日にかけて九州北部の福岡県・大分県を襲った集中豪雨は、35人の命を奪う大災害となった。今回の九州北部豪雨などの被害について、松本純防災担当大臣は、「激甚災害」に指定する方針を示した。

 九州北部豪雨について報道するニュースの中では、「線状降水帯」という新しい気象用語が繰り返し語られていた。

 線状降水帯とは、雨を降らせる積乱雲が次々に発生し、同じ場所を通過または停滞することでつくりだされる、細長く伸びた強い雨の降る区域のことだ。線状に伸びる長さは50~300キロメートル、幅は20~50キロメートルに及ぶという。一つの積乱雲だけなら降雨量に限りがあるが、次々にやってくるので強い雨が降り続き、とんでもない雨量になる。今回の九州北部豪雨では、福岡県朝倉市で24時間に545.5ミリというすさまじい雨量を観測した。

 実は、1995~2009年の4~11月の期間では、台風による直接的な大雨を除くと、集中豪雨の約3分の2で線状降水帯が確認されたという報告がある。ここ数年の集中豪雨を振り返っても、2012年7月の九州北部豪雨、13年8月の秋田・岩手豪雨、14年8月の広島市の豪雨による土砂災害、15年9月の関東・東北豪雨、加えて今年7月17、18日にかけての新潟・福島の豪雨も、線状降水帯によるものとされている。

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上浪春海
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