そのような事情もあり、欧州サッカーでは「監督は一生監督、コーチは一生コーチ」と考えられており、監督はチームに就任するとき、自分の右腕コーチやスタッフを連れて、一緒に移籍するのが通例だ。しかし、昨今のJ1は、サッカーの常識に反する手法が大流行しており、そのデメリットがいくつか発生しているのではないか。

 コーチ昇格を全否定するわけではない。たとえば、ペトロヴィッチ元監督の後任として、コーチ昇格(2007年~2009年/広島コーチ)で広島を率いた森保元監督は、3度のリーグ優勝を成し遂げ、堂々と5シーズンの指揮を執った。コーチ昇格が必ずしもダメというわけではない。

 しかし、コーチ昇格は、チーム作りの手法としては邪道。異なる生業の人物に監督を任せている認識と、慎重さはもっと必要だ。現在も川崎の鬼木達監督、鹿島の大岩剛監督が、コーチ昇格の監督としてチームを好調に導いているが、短期的に結果が出やすいのはコーチ昇格の特徴でもある。この瞬間は良くても、先はわからない。下手をすれば、解任と修復の自転車操業で、何年たってもクラブは成長できないかもしれない。

 J1クラブは、J2やJ3などで“監督として”、手腕を発揮している指導者に、もっと注目するべきだろう。少なくとも欧州主要リーグは、そのような仕組みで監督がステップアップを果たしている。Jリーグは特殊だ。

 今シーズンの監督交代は、やむを得ないと考えられるケースと、クラブの強化方針そのものに疑問符が付けられるケースに分かれる。DAZNマネーによって潤ったJクラブ。その資金をどのように使うべきか。クラブの質により、大きな差が生まれるのではないか。(文・清水英斗)