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珍名踏切マニアがいく! パーマ屋がない「パーマ踏切」

連載「珍名踏切が好き!」

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飯山線の立ケ花(たてがはな)駅。豊野から2駅目で、千曲川畔にある

飯山線の立ケ花(たてがはな)駅。豊野から2駅目で、千曲川畔にある

どこか妙な感触の「パーマ踏切」標識。起点の豊野から6キロ300メートル地点にある

どこか妙な感触の「パーマ踏切」標識。起点の豊野から6キロ300メートル地点にある

パーマ踏切を西側から眺める。遠方が千曲川。この道を下ったところに昔はパーマ屋さんがあったそうな

パーマ踏切を西側から眺める。遠方が千曲川。この道を下ったところに昔はパーマ屋さんがあったそうな

今回紹介した踏切周辺の地図

今回紹介した踏切周辺の地図

 地元に長い人らしく、そのパーマ屋さんが豊野(飯山線の起点)に引っ越して、あちらで美容院をやっているはず、と教えてくれた。やはり昔の地名や施設を語る生き証人・踏切の面目躍如である。

パーマ踏切の名の元となった美容院の場所も教えてもらったので、行ってみることにしよう。元パーマ屋さんへは踏切の道を千曲川の方へ少し下ったあたりで、今は別の家が建っている。しばらく佇んでいたが人の気配はない。おじさんの話の通り、築30年以上は経っているだろうかと値踏みしていると、近所の犬が吠える声。静かな昼下がりであるが、真夏の日差しが熱い。

●移転したパーマ屋さんにインタビュー

 移転した先の豊野へ行って調べてみる時間的な余裕がなかったので、後で電話でもしてみようかとネットで調べてみたら、豊野の近辺に美容院は意外に多く、10軒ほどがヒットしたのでさすがに断念した。そのことを編集担当の大坂さんに話したら「調べてみましょうか。私、地元なので」と即答してくれたので、ありがたくお願いすることに。

 あっという間に取材してきた彼女の話によれば、美容院は「ちどり美容室」で、そこの山浦さん姉妹に話をうかがったという。お姉さんが81歳、妹さんは80歳。もとは東京にお住まいだったが戦況が厳しくなって上今井に疎開。ほどなく東京の家が空襲で焼けてしまったため、終戦1、2年後に姉妹のお母さんがここでパーマ屋を始めることにしたという。お母さんはかつて目黒の雅叙園で着付けの仕事をしており、さらに「電気パーマ」の技術を習得して鬼に金棒である。戦時中は「贅沢は敵だ」「パーマネントは止めませう」などの標語に象徴されるように目の敵にされた業種だが、戦後の大転換で店は大人気になった。山奥の方から弁当持ちで来てくれるほどの大盛況だったという。

 踏切は店ができる前からあったが、枕木を並べただけの簡単なものだったというから、正式な踏切でなかったのかもしれない。それでも客たちは「明神さんの踏切を渡って、川を渡ればパーマ屋」と教え合っていたらしい。明神さんとは、急な階段の蚊田明神社のことだろう。いつしか枕木には「パーマ」の文字が刻まれ、それが正式名称になったようだ。

 店は繁盛していたが、目の前の小さな川が4回も氾濫して店に水が入ってきたので、川を拡張して改修することになった。それを機に豊野へ移転したのだという。それが昭和28(1953)~29年というから、63~64年は経ったことになる。教えてくれたおじさんに伝えたら、そんなに経ったかと絶句するだろうか。

 この踏切は山浦さん家族にとって、大切な記念碑に違いない。

今尾恵介(いまお・けいすけ)
1959年神奈川県生まれ。地図研究家。明治大学文学部中退。中学生の頃から国土地理院発行の地形図や時刻表を眺めるのが趣味だった。音楽出版社勤務を経て、1991年にフリーランサーとして独立。音楽出版社勤務を経て、1991年より執筆業を開始。地図や地形図の著作を主に手がけるほか、地名や鉄道にも造詣が深い。主な著書に、『地図で読む戦争の時代』『地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み』(白水社)、『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)など多数。現在(一財)日本地図センター客員研究員、(一財)地図情報センター評議員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査


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今尾恵介

今尾恵介(いまお・けいすけ)/1959年神奈川県生まれ。地図研究家。明治大学文学部中退。中学生の頃から国土地理院発行の地形図や時刻表を眺めるのが趣味だった。音楽出版社勤務を経て、1991年にフリーランサーとして独立。音楽出版社勤務を経て、1991年より執筆業を開始。地図や地形図の著作を主に手がけるほか、地名や鉄道にも造詣が深い。主な著書に、『地図で読む戦争の時代』『地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み』(白水社)、『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)など多数。現在(一財)日本地図センター客員研究員、(一財)地図情報センター評議員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査

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