終わった。完全に小籔新喜劇の足を引っ張ってしまった。このまま小籔さんにど突かれて気絶してしまったほうがましだ。申し訳無い気持ちで、舞台に立ちすくんでいると、小籔さんが一言。

「お粗末さまでした」

 ここでようやく笑いが起きた。小籔さんに救われたのだ。自分たちが笑いを取りにいかねばならないはずのシーンで、座長の力に頼ってしまったのは芸人としては無念だが、なんとかチンピラのシーンを終えることができた。たった一言で、舞台を笑いに変えられるあのパワー。吉本新喜劇で数えきれない場数を踏んで来たという自負と実力の賜物から出てくるのだろうと思う。

 舞台終了後、座長から先に帰るのが原則なため、若手は最後まで残る。しかし、小籔さんは最後まで楽屋に残り、数人の芸人とずっと今日の舞台の話をして、笑わせていた。舞台が終わるとサッと帰るのが座長であり、私は最後の最後まで楽屋に残る座長を今まで見たことがなかった。舞台であれだけ笑いを取り、楽屋でも後輩を笑わせ続ける小籔さん。本当に笑いを愛する方なんだなと感じた。(新津勇樹)