不治の病といわれた急性骨髄性白血病も今や…… (※写真はイメージ)
不治の病といわれた急性骨髄性白血病も今や…… (※写真はイメージ)

 32年前の1985年、人気女優だった夏目雅子さんの命を奪った急性骨髄性白血病。高齢化にともない、年配の患者が増加している。かつて不治の病とされていたが、治療法の発達で3~5割ほどが治癒するようになった。血液がんの専門医に現状を尋ねた。

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 急性骨髄性白血病は、血液がんの一種。血液内の骨髄にある造血幹細胞に異常が起こり、がん化した細胞が無制限に増殖して、正常な血液を作ることができなくなることで発症する。遺伝子に何らかの異常が起きることが原因と考えられるが、詳しい原因は未解明だ。国立がん研究センターがん情報サービスによると、急性骨髄性白血病の発症頻度は10万人に2~3人となっている。

 ゆっくり増殖が進む「慢性」のものに対し、夏目さんらが侵された「急性」は急速に進行するため、異変に気づく頃にはかなり進行してしまっている。

 比較的若い人がかかる印象があるかもしれないが、近年は、高齢の患者も増えているという。都内にある総合病院の血液内科部長の医師はこう話す。

「基本的に長生きするほど遺伝子異常は増えるので、それにともない最近は高齢で発症する人が増えています」

 医師によると、急性骨髄性白血病の主な治療方法は、抗がん剤を使う化学療法であり、それに造血幹細胞の移植を追加することもある。化学療法だけで治る人はおよそ3人に1人で、移植までおこなうと5割ほどが治るという。

 それならば誰しも移植をしたいと思うだろう。だが、実は移植の前には、強力な化学療法と放射線照射で造血細胞を徹底的に叩いて破壊する必要がある。つまり、からだに大きな負担がかかるのだ。そのため、高齢者には難しく、以前は50代までの患者しか移植はできなかった。

 だが、近年、「ミニ移植」と言われる、抗がん剤や放射線の量が少なくてすむ治療法が可能になり、65歳までが移植を受けられるようになった。なおかつ、最近はドナーの範囲も広がってきているという。

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