■国家権力はいる? いらない?

木村:ここでさらにもうひとつ。国が提供するものの中で、とても重要なのが「権力」というものです。皆さん、権力とはどんな意味だと思いますか?

加藤:私にとっては、権力を持つ人は「偉い人で何でも言える」というイメージですね。身近な例だと親かなあ。権力というと大げさかもしれませんが、親から「やりなさい!」って言われたら、「はい」って従います(笑)

木村:そう、つまり「その人の意思を問わずに人を従わせることができる力」、それが権力ですね。権力にも色々あります。親子関係の中で働く権力は、親と子の間でしか通用しない非常に限定的なものです。国が持つ権力はとても広く、強いもので、これを「国家権力」といいます。私たち市民は、国内にいる限りは、その国家の意思に従わなくてはなりません。国には、そういう非常に強い権力が与えられているのです。

茂木:そう聞くと、「国の言うことは絶対」って感じがして、何だかちょっと恐いですね。

木村:その視点は大切ですね。ただ国家権力というのは、実は存在しないと困るものでもあるんですよ。例えば、「自動車を運転するときは右側通行なのか、左側通行なのか」、どちらかに統一されていなければ事故がたくさん起きてしまいますよね。

 こうした「皆が暮らしやすくするためのルール」を決めるのも、国家権力の大切な役割のひとつなのです。従って、国家権力も一種の公共財といえます。

向井地:なるほど。でもそのルールって、どうやって決めるのでしょうか。右側通行がいいと言う人もいれば、左側通行がいいと言う人もいると思います。

木村:それがまさしく「政治」ですね。結局、国の政治とは「国家権力の利用方法を決めること」といえます。国家権力は、本当に色々な場面で使われるものですから、国という団体のメンバーである国民からもさまざまな意見が出てきます。