西武・源田(左)とオリックス・山岡(c)朝日新聞社
西武・源田(左)とオリックス・山岡(c)朝日新聞社

 9月に入り、いよいよ大詰めを迎えているプロ野球のペナントレース。個人タイトル争いもそれぞれ数人ずつに絞られてきているが、中でも注目度が高いのが、やはり一度しか獲得できない新人王(最優秀新人選手)だ。セ・リーグに続いて、今回はパ・リーグの新人王(最優秀新人選手)有力選手を紹介したい(データは全て9月6日現在)。

 パ・リーグの過去の新人王受賞選手を振り返ると、1999年の松坂大輔(西武)以来、投手の受賞者が続いている(2000年は該当者なし)。しかし、今年最有力と見られているのは野手の源田壮亮(西武)だ。

 ここまで全123試合にショートでスタメン出場しており、長年のチームの弱点を見事に埋めてみせた。失策数は15と少なくはないが、俊敏なフットワークと高いハンドリング技術はプロの中でも目立つ存在である。もうひとつの武器はそのスピード。とにかくスタートの思い切りが良く、現在リーグ2位の31盗塁をマークしており、盗塁王のタイトルも射程圏内に入っている。打者走者としても全力疾走を怠らず、内野安打の数も多い。社会人時代は9番で出場することが多く、当てるだけのバッティングが目立ったが、プロ入り後はしっかり振り抜けるようになったのも大きな成長だ。ひとつ気がかりなのはスタミナ面。8月中旬から三振が増えており、打率もじりじりと下降している。シーズン終盤にもうひとふんばりしたいところだ。

 源田の対抗になるのが山岡泰輔(オリックス)だ。開幕直後は好投にもかかわず勝ち星に恵まれないことが多かったが、5月28日のロッテ戦で初勝利をマークすると、夏場から徐々に調子を上げてきた。8月26日の西武戦では140球を投げきり完封勝利を挙げるなど、現在3連勝中で7勝をマークしている。最大の武器は、高校時代から定評のあるスライダー。打者の手元で鋭く変化するボールで、スピードと曲がりの大きさにもバリエーションがある。フォームの躍動感が素晴らしく、上背のなさが全く気にならない。勝負どころでギアを上げることもでき、先発投手として試合を作る能力の高さはチームでも指折りの存在だ。現状は源田にまだまだリードを許している状態だが、過去数試合と同様の内容のピッチングを続けて二桁勝利をクリアすれば、大逆転の可能性も残されているだろう。

 パ・リーグも、セ・リーグと同様に上位二人が完全に抜け出している状況だが、他にも活躍を見せる選手を紹介したい。

 まず、投手ではリリーフで戦力となっている選手が多い。その代表格が黒木優太(オリックス)だ。54試合、31ホールドポイントはいずれもチーム最多。夏場以降は失点するケースが多く、防御率は4点台まで悪化しているものの、チームにとって欠かせない存在であることは間違いない。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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