中日・京田(左)、DeNA・浜口 (c)朝日新聞社
中日・京田(左)、DeNA・浜口 (c)朝日新聞社

 9月に入り、いよいよ大詰めを迎えているプロ野球のペナントレース。個人タイトル争いもそれぞれ数人ずつに絞られてきているが、中でも注目度が高いのが、やはり一度しか獲得できない新人王(最優秀新人選手)だ。まずはセ・リーグから有力選手について紹介する。(データは全て9月6日現在)

 現時点での筆頭候補は間違いなく京田陽太(中日)だ。チームでは大島洋平以来7年ぶりとなる開幕スタメンを勝ち取ると、5月以降は完全に1番に定着し、チーム2位の130安打を放つ活躍を見せている。

 京田の持ち味はなんと言ってもそのスピードだ。182センチと大柄だが、トップスピードに入るのが速く、4秒00を切れば俊足と言われる一塁までの到達タイムでも大学時代から楽に3秒9台で駆け抜けていた。内野安打34本は両リーグトップで三塁打7本もセ・リーグ1位。盗塁数も21で3位につけている。大学時代は迷いが見られたバッティングも思い切りが良くなり、広角に打てる巧さも持っている。出塁率が高くないのは課題だが、ショートの守備も堅実で安定感があり、低迷するチームにとって希望の星と言える存在だ。 

 京田の対抗馬となりそうなのが浜口遥大(DeNA)だ。2試合目の先発となった4月9日の中日戦で初勝利をマークすると、5月下旬から6月にかけては3連勝も記録。7月に肩の故障で一時期戦列を離れたものの、8月には復帰し、ここまでチーム2位の9勝とローテーション投手として十分な働きを見せている。9月3日の巨人戦では、負けたら4位転落というプレッシャーにも負けず、8回2被安打無失点とチームを救う好投を見せた。173センチと小柄だが、下半身が強く真上から腕が振れており、ボールの角度は申し分ない。そして最大の武器はブレーキ抜群のチェンジアップだ。一度ふわりと浮いてから沈むような軌道のボールで、打者にフルスイングを許さない。コントロールはまだまだ課題だが、イニングを上回る三振を奪っているのも立派だ。先述した巨人戦のようなピッチングを続けて勝ち星を伸ばせば、大逆転で新人王選出の可能性もあるだろう。

 この二人以外となると一気に可能性が低くなるが、今後のブレイクが期待できる選手は少なくない。

 投手で筆頭格と言えるのが畠世周(巨人)だ。ドラフト指名直後に右ひじの手術を受けたことでキャンプでは出遅れたが、7月からはローテーションの一角に定着し、8月以降は4勝をマーク。細身だが柔らかい腕の振りから繰り出す150キロ前後のストレートは勢い十分で、10を超える奪三振率を誇る。7月以降に浮上してきたチームの立役者であることは間違いない。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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