不可思議なメンバー選考もあったが、「申し子」と言える選手も生み出した。プレーインテンシティの高い原口元気、久保裕也はその筆頭格だろう。今年8月のオーストラリア戦では、井手口陽介、浅野拓磨が華々しい活躍を示した。大迫勇也、昌子源の二人も先発に定着。乾貴士の選出などは遅すぎた感はあるが、着実に戦力を高めている。

 一方で、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司らザック時代の主力に依存しないチームを作った。長谷部誠の代役を見つけられていないのはマイナス点だろう。直近のサウジアラビア戦も、不在の在を感じさせた。ただ、ハリル色を打ち出しつつある。

「チームを変貌させている」

 その点は正しく評価すべきだろう。それは「人間的に傲慢さが鼻につく」「サッカーが面白くない」とは別問題。リアリストの指揮官として、W杯出場という大きな仕事をやり遂げた。

 もっとも、真価が問われるのはW杯本大会になる。3試合+1試合=決勝トーナメント進出することができるか。そこでリアリストの時代の答えが出る。

小宮良之
1972年生まれ。スポーツライター。01~06年までバルセロナを拠点に活動、帰国後は戦うアスリートの実像に迫る。代表作に「導かれし者」(角川文庫)、「アンチ・ドロップアウト」3部作(集英社)、「おれは最後に笑う」(東邦出版)など。3月下旬に「選ばれし者への挑戦状」(東邦出版)を刊行