攻撃面でスペシャリティを出すことが期待される柴崎岳(撮影・六川則夫)
攻撃面でスペシャリティを出すことが期待される柴崎岳(撮影・六川則夫)

「我々が本大会に向けて成長するためには、この試合が素晴らしい機会になるだろう」

 サウジアラビア戦の前日会見においてハリルホジッチ監督はこう語った。すでにワールドカップ出場が決まった後の最終予選の締めくくりであると同時に、“第三章”の新たなスタートとして位置づけているようだ。

 オーストラリア戦ではインサイドハーフに井手口陽介と山口蛍、左右のウィングに乾貴士と浅野拓磨を起用。3-4-3のオーストラリアに対して、起点となるボランチの2人に自由を与えず、ボールを奪ったら相手の3バックの背後を徹底して突く戦い方で相手のストロングポイントを消しつつ、自分たちも強みを発揮する形で快勝につなげた。

 “完全アウェー”となるサウジアラビア戦は夜間の開催と言っても、気温と湿度が高いという環境下でオーストラリア戦ほどの運動量を発揮するのは難しい。だが、幸いにも「美しいピッチを用意してくれた」と指揮官が感謝を語るほどピッチコンディションは良好だ。4-2-3-1のシステムで主導権を握りにくるサウジアラビアに対し、日本もある程度ボールを持つ時間を増やして試合を進めていけるかどうかが勝負の生命線になりそうだ。

 その点から注目されるのが柴崎岳だ。ゲームメーカーとしてのイメージが強いMFだが、スペインで中盤の強度が高いサッカーを経験しており、守備面でも成長が見られる。

「求められていることをしっかりと評価されるようにプレー、パフォーマンスすることが大事ですし、監督も言ってますけど、ワールドカップでは今のままではまだ十分な結果を得るには足りない。僕自身もそう思いますし、もっともっと向上心を持って、満足せずにやることは大事」

 サウジアラビア戦で起用された場合には「目に見えるところだけではなくて、やはり精神的なところも向上していますので、さまざまな面で今の自分を表現したい」と語る柴崎。中盤の一角でチームに求められるスタンダードを出しながら、自身のスペシャリティーを発揮していけるかどうかが活躍のカギを握る。

 オーストラリア戦では後半早々から香川真司らとアップしながら戦況を見守ったが、交代カードが切られたのは前線の3枚であり、最後まで柴崎に声がかかることはなかった。

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