民進党の新代表に選ばれた前原氏(写真中央) (撮影/西岡千史)
民進党の新代表に選ばれた前原氏(写真中央) (撮影/西岡千史)

 1日に行われた民進党代表選で、対抗馬の枝野幸男氏(53)に圧勝した前原誠司氏(55)。前原氏は勝利後の演説で「国民に新たな選択肢を示す」と訴えた。

 代表選で最も注目を集めたのが、共産党との選挙協力だ。

 野党共闘に前向きな枝野氏に対し、前原氏は「理念、政策が一致しない政党と協力することは野合でしかない」と慎重な姿勢を崩さなかった。

 とはいえ、前原新代表がただちに共産党と“絶縁”するわけではない。前原陣営の幹部は言う。

「前原さんが目指すのは、野党を再結集して自民党に対抗できる政党をつくること。共産党との協力も必要だが、消費増税や安全保障政策で意見がまったく異なる以上、全国レベルで一体化して選挙はできない。各選挙区の事情に応じて、選挙協力することになるだろう」(前原陣営幹部)

 むしろ両者の温度差が激しかったのは「共産党以外の野党」との距離だ。

 枝野氏は、細野豪志衆院議員ら、民進党を離党した議員の選挙区に対立候補を立てることを明言。一方の前原氏は、小池百合子東京都知事に近い「日本ファーストの会」も含め、共産党以外の野党との選挙協力に意欲を見せた。

 民進党の地方議員は「枝野さんは共産党との協力をアピールするために、他の野党勢力との協力を軽視してしまった」と話す。

 前原氏が自由党の小沢一郎代表と“和解”したことも、前原氏圧勝の原動力となった。
 前原氏と小沢氏は、民主党政権時代に激しく対立。それが、近年は繰り返し食事をするなど関係改善を重ねた。

 代表選の最中にも「(小沢氏は)もっともわれわれの政策理念に近い考えを持っている」と持ち上げた。前原氏の推薦議員には、松木謙公氏や小宮山泰子氏など、かつての小沢グループの議員が名を連ねた。

 前原氏の“変化”を歓迎したのは、小沢氏に近い議員だけではない。かつて反小沢グループに所属していた民進党のベテラン議員は言う。

「政権を政権を再び取り返すには、政治家の“知恵”が必要。小沢さんにはそれがあるが、民進党の議員は持っていない。小沢さんだけではなく、離党した議員や小池百合子東京都知事らとの連携も考えて、野党の分裂を防がなければならない。そうしないと、民進党どころか、すべての野党が次の衆院選で消滅してしまう」

 小沢氏は、偽メール事件で辞任した前原氏の後任として、06年4月に民主党の代表に就任した。同月に実施された千葉7区の補欠選挙で太田和美衆院議員を初当選させ、党内の求心力を一気に高めた。前原新代表は、10月22日に投開票される新潟、青森、愛媛の3つの衆院補欠選挙が、まずは最初の審判となる。
(AERA dot.編集部・西岡千史)