「あなたは今、命に関わる状態かもしれない」と言われ、緊急入院したのは2カ月前だ。加えて「通常ないことが体で起きていて、もう普通の食事はできない可能性がある」と言われたときは、家を出がけに食べてきた朝飯が人生最後の食事だったのかと、ぼんやり考えた。今はその状態を脱し、自宅でふつうに三食とれている。通常ないことが体で起きているというのは「仮説だった」と医師は言った。

 あなたなら、こんな日々をどう受け止めるだろうか。プロである医師でも判断しかねる病状。まるでジェットコースターのような激しいアップダウン。ふつうの神経ならば参ってしまうのではないか。

 それを「なんか、すごいことを言われているな」とどこか他人事のように聞いてしまうのは、今もこうして文章を書き続けているからだろう。この話を何かに使えないだろうか、あのエピソードとくっつければコラムが一本できるのでは。話に耳を傾けながら、つい頭の中で事実関係を整理し、ノートに書きつけている自分がいる。

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