また、クルーズのポジションには技巧的なドリブルと強烈なミドルシュートを誇る176cmのMFマッシモ・ルオンゴ(QPR/イングランド2部)、パワフルなフィニッシュを誇る189cmの新鋭ジャクソン・アーバイン(バートン/イングランド2部)などの個性的なオプションを備えており、もちろん勝負どころではケーヒルの出番が巡ってくるだろう。

 そうした相手に対して日本の守備陣に求められるのは、必要以上にラインを下げないこと。そして中盤とのコンパクトな関係を維持しながら3人のアタッカーから目を離さず、司令塔のアーロン・ムーイ(ハダーズフィールド/イングランド)らを起点に裏を狙う動きを逃さず、しつこくマークに付くことで縦への仕掛けの精度を削ぎたい。そうすることで相手に無駄な横パスを出させればボール奪取できるシーンも増えるはずだ。

 そうした守備を継続的に実行していくには、個人の能力に加えて経験が必要になる。その基準で考えれば、センターバックは吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)と昌子源(鹿島)のコンビがファーストチョイスになる。吉田については一部でけがの報道があり不安の声が広がったが、本人が公式Twitterで否定し、プレミアリーグの開幕戦でチームの無失点に貢献した。昌子のパフォーマンスはJ1首位の鹿島で見せている通りだ。

 日本代表は親善試合のシリア戦で明らかな連携不足を露呈したが、イラク戦は過酷な試合環境で終盤に失点したものの、距離感や相互のカバーリングに改善が見られた。今回は試合まで準備期間が限られるが、オーストラリアのFWの特徴を分析し、状況に応じた守り方をディスカッションして臨めば、基本的には問題なく対応できるだろう。

 ただし、ロギッチやクルーズのポジショニング、彼らとのポジションチェンジでユーリッチがワイドに流れる動きに対し、サイドバックとの柔軟な受け渡しや距離を詰める動きが求められるシーンも出てくるだろう。そこで、例えば右の酒井宏樹(マルセイユ/フランス)を吉田がサポートする場合、昌子が中央でどう備えるか。臨機応変な判断をしなければならない。

 オーストラリアが3-4-3を採用してきた場合、右のサイドハーフには181cmのマシュー・レッキー(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)が起用されるはずだ。クラブでは原口元気のライバルでもあるレッキーは高い機動力で攻守にハードワークするタイプの選手だが、本職はFWであり、タイミング良くゴール前に飛び込んでくると3トップ以上に厄介な存在になりうる。

 オーソドックスに考えれば、イタリア・セリエAの開幕戦でフル出場した長友佑都(インテル・ミラノ/イタリア)が左サイドバックのスタメン候補だが、サイドの攻防はともかく、ゴール前での競り合いや空中戦が発生すると不安要素になりうる。またセットプレーの守備を想定しても高さを確保したい。そうした面を優先すれば、アウェーの試合で同ポジションで奮闘した槙野智章(浦和)を引き続き使う可能性も十分にある。

 ただ、ライン際を突破するだけでなく、中盤や前線のサポートにも慣れている長友がいないと、左サイドの攻撃が機能しにくい傾向もある。槙野も非凡な攻撃センスを備えるが、オートマチックなボール回しから攻め上がるタイミングを計れる浦和ほど攻撃面の貢献は期待できない。攻守両面でバランス良く絡める酒井高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)も候補だが、ゴール前の空中戦にはやや不安があり、ブンデスリーガの開幕戦でサブだったのも気になるところだ。

 コンディションに問題がなければ、吉田と昌子のセンターバックコンビと右サイドバック・酒井宏樹のスタメンは堅い。ただ左サイドバックに誰を起用するかは攻撃面での兼ね合いも含め、勝負のカギを握る重大要素かもしれない。また、終盤にケーヒルやアーバインが投入された時の対策として、長身のセンターバックを増やして対応すべき状況になる可能性は高い。

 前回のイラク戦では吉田、昌子、槙野、三浦弦太(G大阪)の4人がセンターバックとして招集されたが、槙野をサイドバック枠にすることで長身DFの植田直通(鹿島)などを加えられる。もちろん前回のオーストラリア戦の終盤に投入された丸山祐市(FC東京)という選択肢もあるが、吉田か昌子にアクシデントが発生した場合の代わりだけでなく、終盤のパワープレー対策を熟考して守備陣を選んでいく必要がある。(文・河治良幸)